高橋一生は“3D版露伴先生”だ 忍び寄る恐怖がたまらない『岸辺露伴は動かない 懺悔室』

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の高い解像度

 それまで露伴先生の楽しい(?)ヴェネチア紀行の様子を収めていた本作だったが、この男の懺悔を境に、『岸辺露伴は動かない』シリーズの持ち味であるじっとりとまとわりつくような恐怖に包まれる。やがて呪いは露伴と泉にも襲いかかる。カフェに入れば手違いで豪華なオードブルがサービスされ、通りすがりの男からはオペラのチケットを渡される。旅行先のラッキーなイベントが、こんなにも恐ろしく感じられることはない。“幸福”という至上の存在すら、どこか奇妙でおぞましいものとして描くことができる本作の胆力には圧倒された。

 何かと議論が巻き起こりがちな実写化作品。『岸辺露伴は動かない』シリーズでは、『ジョジョ』の代名詞である「スタンド」を「ギフト」に変更するという大胆な変更を行ったものの、原作ファンからも高い評価を得ている。

 それは、『岸辺露伴は動かない』シリーズが、アニメや漫画と現実の間にどうしても生じてしまう乖離を、丁寧かつ大胆な解釈を以て、再定義しているからではないだろうか。本作に限らず実写版『岸辺露伴は動かない』シリーズは、「このキャラがもし現実にいたらこんな感じなんだろうな」と思わせる絶妙なポイントを突いてくれる。背中のもぞもぞとした部分を孫の手で一気に引っ掻いてくれるような快感と、ただの再現には留まらないクリエイティビティ。『岸辺露伴』シリーズは、まさしく痒いところに手の届く実写化作品なのだ。

 春も終わり、梅雨の到来を予感させる湿気がムンムンと漂う今日この頃。そんな季節柄にピッタリな本作を、ぜひ劇場で楽しんでほしい。

■公開情報
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
全国公開中
出演:高橋一生、飯豊まりえ、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介、井浦新
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣裳デザイン:柘植伊佐夫
製作:『岸辺露伴は動かない 懺悔室』 製作委員会
制作プロダクション: NHKエンタープライズ、P.I.C.S.
配給:アスミック・エース
©2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
公式サイト:kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp

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