高橋一生は“3D版露伴先生”だ 忍び寄る恐怖がたまらない『岸辺露伴は動かない 懺悔室』

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の高い解像度

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、2カ月前にローマ、フィレンツェ、ヴェネチアを巡るイタリア旅行に行ってきた柴が映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』をプッシュします。

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』

 特別ドラマから始まり、気づけば劇場版第2弾と、人気シリーズとして定着した実写版『岸辺露伴は動かない』。

 本作では、何にでも首を突っ込む漫画家・岸辺露伴(高橋一生)がヴェネチアの地を訪れる。相方である編集者の泉京香(飯豊まりえ)と共にイベントに参加する予定が、1人前乗りした露伴は取材としてヴェネチアを自由気ままに散策する。何と言っても目を引くのは露伴の纏うコートだ。『岸辺露伴は動かない』しかり、原作の『ジョジョの奇妙な冒険』といえばハイセンスなファッションが取り上げられがちだが、実写版も負けてはいない。機能性はどうなんだという野暮なツッコミが込み上げてくるほどベルトだらけの黒いコートは、ヴェネチアの美しい街並みにも見劣りしない。のちほど登場する泉も目の覚めるような鮮やかなピンクのコートを身につけていたが、レトロなハンドバッグと組み合わせて華麗に着こなしていた。

 冒頭、ヴェネチアに一人やってきた露伴を出迎えるのはスリたちだ。原作である“ジョジョ”シリーズにはスリの存在が目立つ。第3部『スターダストクルセイダース』で花京院(ニセ)にボコボコにされたスリや、第7部『スティール・ボール・ラン』でジャイロからお金を盗んだスリなど、まぁまぁな頻度で登場する。第5部『黄金の風』主人公のジョルノに至っては、イタリアを訪れた康一(第4部『ダイヤモンドは砕けない』の主要人物)の荷物を盗んでいた。

 かくいう私も、スリとは浅からぬ因縁がある。冒頭で触れたように、2カ月前にイタリアを訪れたのだが、到着初日、ローマでスリにスマホを盗まれるという、まさに康一や露伴のような場面に遭遇した。夜の地下鉄に乗ったが最後、スリの集団に取り囲まれ、首から下げていたiPhoneは綺麗にケースからくり抜かれて盗られていた。私は翌朝、泣く泣く警察のお兄さんに被害を訴えるぐらいしかできなかったのだが、“ギフト”という特殊能力を持つ露伴は違う。気を逸らすためやかましく露伴に話しかけるスリたちに「ヘブンズ・ドアー」を食らわせ、スリたちを自分の意のままに従わせる。しかもセリフはイタリア語という劇場版仕様だ。序盤から惜しげもなくお出しされる見せ場に、否応なく期待が高まる。

 その後、教会を訪れ、懺悔室に入ると、成り行きである男の懺悔を聞くことになった露伴。イタリアで懺悔室というと、『ニュー・シネマ・パラダイス』を連想してしまうが、恋の甘酸っぱさなどはかけらもなく、不穏な劇伴も相まってJホラーさながらの湿り気を帯び始める。浮浪者を邪険に扱い、死に追いやったことをきっかけに、男の周囲には異変が起こるように。浮浪者が死に際に残した「お前は幸せの絶頂に至った時に死ぬ」という不吉な予言。スポーツくじの当選、美しい妻、事業の成功……。浮浪者の予言は呪いとなった。男に降りかかる気味の悪いほどの“幸福”に、露伴のペン先をかたどったピアスが揺れる。そして呪いの矛先は、彼の娘へと向かう。男は、娘に割れた鏡を渡したりと、彼女が幼い頃から「1番の幸せを手に入れてはいけない」と教え込む。だが、娘は数日後に結婚式を控えており、男は最高の幸せを迎える瞬間を阻止すべく動きだす。

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