Mrs. GREEN APPLE 大森元貴の演技を分析 “芸歴の蓄積”が俳優としても武器に

Mrs. GREEN APPLE 大森元貴の芝居を分析

 特筆すべきはその「目」の演技力だ。セリフのない場面でも、視線ひとつで感情の揺れを表現し、目の奥が笑っていない表情が観る者に息苦しいほどの緊張感を与える。また、大森は静と動の切り替えが抜群に巧い。普段は内向的で抑え気味な「鈴木」というキャラクターが、感情が爆発する場面ではまるで別人のように豹変する。その瞬間の声のトーンやスピードの変化、身体の動きのメリハリが絶妙であり、「人格が変わったのか」と思わせるほどであった。

 共演の菊池風磨とのシーンでは、両者が発する“静かな緊張感”が画面全体を包み込む。特に、対峙する場面では言葉よりも空気の圧で押し合うような緊迫感があり、菊池が大森の演技を「天才」と評していたのもうなずける。

 実は、大森は“子役出身”という経歴の持ち主。中学時代には鈴木福を輩出したテアトルアカデミーの劇団コスモス中等部に所属し、演技や表現の基礎を磨いていた。2012年に松岡昌宏が主演したドラマ『13歳のハローワーク』(テレビ朝日系)ではバンドのベーシスト役として出演しており、すでに当時から人前での表現に長けていたことがうかがえる。芸歴の蓄積が、今の堂々たる演技につながっているのは間違いない。

Mrs. GREEN APPLE 大森元貴が『あんぱん』で朝ドラデビュー 音楽業界関係者はどう見る?

3月31日に放送が開始となるNHK連続テレビ小説『あんぱん』に、Mrs. GREEN APPLEのギター&ボーカルを務める大森元…

 このほかにも近年、音楽のジャンルで活躍するアーティストが映画やドラマに出演するケースが増えている。野田洋次郎(RADWIMPS)の『トイレのピエタ』、山村隆太(flumpool)の『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)、Fukase(SEKAI NO OWARI)の『キャラクター』や『はたらく細胞』、miletの『知らないカノジョ』などが代表例だ。共通しているのは、音楽活動で培った“感情の表現”や“間の使い方”がそのまま演技に活かされているという点である。

 歌うことと演じることは異なる表現方法だが、どちらも「人の心に訴えかける」という意味では本質的に近いものがあり、今回の大森の怪演も、その流れの延長線上にあると言えるだろう。すでに大森はNHK連続テレビ小説『あんぱん』への出演も決定しており、これから「俳優・大森元貴」を観る機会が増えていきそうだ。

■公開情報
『#真相をお話しします』
全国公開中
出演:大森元貴、菊池風磨、中条あやみ、岡山天音、福本莉子、伊藤健太郎、栁俊太郎、綱 啓永、田中美久、齊藤京子、原嘉孝、桜井ユキ、山中崇、秋元才加、大水洋介、伊藤英明
監督:豊島圭介
脚本:杉原憲明
企画・プロデュース:平野隆
エグゼクティブプロデューサー:大脇拓郎
原作:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮文庫刊)
制作:ツインズジャパン
配給:東宝
©2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会
公式X(旧Twitter):@shinso_movie
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