『LAZARUS ラザロ』はなぜここまで“リアル”? 渡辺信一郎監督の演出のこだわりを紐解く

『LAZARUS ラザロ』はなぜここまでリアル?

 また「人類を救うワクチンを追い求める」というストーリーからも、新型コロナウイルス感染症が流行した際に世界で起こった出来事とリンクするものを感じる。しかし、コロナが流行する前から『LAZARUS ラザロ』の制作はスタートしていたとのことで、渡辺監督はインタビューで「フィクションとして考えてたら現実に追いつかれた感じ」と明かしている。(※3)

 実際には「オピオイド危機」をヒントにしたそうだ(※4)。オピオイド危機とは、1990年代後半から現在に至るまで、依存性や中毒性のある麻薬物質「オピオイド」を含有する処方鎮痛剤により、全米で50万人以上が亡くなっている社会問題のこと。今もなお、依存症に苦しんでいる人が多く存在する(※5)。

 そして、そんな『LAZARUS ラザロ』を立体的に作り上げている要素の最たるものとして、声優陣の演技が挙げられる。主人公・アクセル役を演じる宮野真守が先行上映会で「お芝居の方向性も生っぽさを重視している」と語ったように、キャスト全員の演技がナチュラルなのだ。

 アニメの声優といえば、声だけで感情を表現しなければいけないため、いささか誇張した演技が求められる。しかし今作は、描写にリアリティがあることから、声優がそのような演技をしてしまうと異質になってしまう。そこで求められたのが、宮野の言った「生っぽさ」なのだろう。あくまで本作はアニメーションであることから、自然でありすぎてもいけない。キャスト陣は、その絶妙な「生っぽさ」を見事に表現している。

宮野真守はなぜオファーが絶えないのか? ジャンルを問わず滲み出る“らしさ”を紐解く

その名を聞いただけで、心のどこかがふっと軽くなる。「ああ、宮野真守が出てるなら大丈夫だ」と。近年、こうした感覚を共有する視聴者が…

 これまでアニメを観てきた中で感じたことのない映像体験が味わえる『LAZARUS ラザロ』。1話観ただけで世界観に惹きこまれるので、まだ観ていない方は絶対にチェックしてほしい。

参照
※1. https://gigazine.net/news/20250416-lazarus-shinichiro-watanabe-interview/
※2. https://lazarus.aniplex.co.jp/news/?id=67592
※3. https://cocotame.jp/series/110488/
※4. https://smart-flash.jp/entame/338279/
※5. https://j-seeds.jp/column/post-2183/

■放送情報
『LAZARUS ラザロ』
テレ東系にて、毎週日曜23:45〜放送
キャスト:宮野真守(アクセル役)、古川慎(ダグ役)、内田真礼(クリスティン役)、内田雄馬(リーランド役)、石見舞菜香(エレイナ役)、林原めぐみ(ハーシュ役)、大塚明夫(アベル役)、山寺宏一(スキナー役)
原作・監督:渡辺信一郎
脚本:渡辺信一郎、佐藤大、小沢高広(うめ)、近藤司
アクション監修:チャド・スタエルスキ(87Eleven Action Design)
キャラクターデザイン:林明美
コンセプトデザイン:ブリュネ・スタニスラス
美術監督:杉浦美穂
色彩設計:田辺香奈
画面設計:坂本拓馬
撮影監督:佐藤光洋
音楽:Kamasi Washington、Bonobo、Floating Points
オープニングテーマ:「Vortex」Kamasi Washington
エンディングテーマ:「Lazarus」The Boo Radleys
音響効果:Lauren Stephens(Formosa Group)
音響制作:dugou
アニメーションプロデューサー:松永理人
制作:MAPPA
企画プロデュース:SOLA ENTERTAINMENT
©2024 The Cartoon Network, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://lazarus.aniplex.co.jp/ 
公式X(旧Twitter):https://x.com/lazarus_jp

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