『小市民シリーズ』小佐内さんの“爆弾”を見逃すな 羊宮妃那の演技力に感じ入る

米澤穂信の学園ミステリ『〈小市民〉シリーズ』(創元推理文庫刊)を原作にしたTVアニメ 『小市民シリーズ』第2期が4月からスタートしている。原作の『秋期限定栗きんとん事件』を描くエピソードから始まって、最終巻となる『冬期限定ボンボンショコラ事件』へと進んでいく。
注目は5月17日放送の第17話「ふたたびの秋」。原作どおりなら、今まで描かれてきた連続放火事件の真相が明かされるとともに、小佐内ゆきという少女の感性が露わになって観る人の心をかき乱す。
『小市民シリーズ』の展開を振り返る
中学時代に持ち前の推理力を発揮して謎を解き明かし、注目を浴びていた小鳩常悟朗だったが、ある一件をきっかけに目立たずひっそりと生きる「小市民」でいようと決意する。小佐内ゆきも同じように鋭い感性を封印し、共に進んだ船戸高校でいっしょにスイーツ巡りをするような平凡な日常を送り始めようとする。
ところが、小鳩がちょっとした謎解きに巻き込まれては、見事に解決してしまう。ここから小鳩を探偵役に、小佐内がバディとなって事件に挑むラブコメチックな学園ミステリが始まるのか。そう思わせて、第3話「ハンプティ・ダンプティ」で小佐内の“本性”めいたものを見せて、スイーツが登場するからといって作品世界が甘いものではないことを突きつける。
第1話「羊の着ぐるみ」で小佐内は、小鳩といっしょに買いに行って自転車のかごに入れていた春期限定のいちごタルトを、自転車泥棒によって台無しにされる。第3話で誰がどうして自転車を盗んだのかが、小鳩の推理によってはっきりしてきたとき、「この辺で終わりにして、もう帰ろう」と誘う小鳩に小佐内が見せた反応がどうにも凄まじい。
「終わりにする? ううん、小鳩くん、これからじゃない、せっかく尻尾を掴んだんだもん」。そう静かに呟く小佐内の声は、そこまでの無邪気さや幼さが消えて冷え冷えしたものになった。映像のほうも、街道沿いの木の下だった場所が橋の上へと変わり、背景も真っ赤に染まって、観ている人に異界へと引きずり込まれたような感覚を与えた。
そして、振り向いて「償ってもらわないと」と言う小佐内のそこまで見せてこなかったような微笑みが、小佐内という女子の“正体”を分からせた。執念。あるいは執着。そこから生まれる感情や言動がもたらすことになるかもしれない事態を、小鳩は恐れた。
この後の『夏期限定トロピカルパフェ事件』で、「小市民」であるために“封印”していた感情を解き放っていく小佐内に小鳩が苦慮する。結果、はた目には付き合っているように見えた小鳩と小佐内の関係が崩れ、小鳩は告白してきた仲丸十希子と付き合い始める。小佐内も声をかけてきた下級生の瓜野高彦と付き合うようになる。TVアニメの第2期はそこから始まった。
海外勢も驚愕 小佐内さんの恐ろしさ
まず描かれるのが、高校の周辺で発生する連続放火事件に新聞部の瓜野が挑み、犯人を捕まえようと奮闘するストーリーだ。功名心に駆られて突っ走るようなところがある瓜野には少し辟易とさせられるが、誰も読まない校内新聞に注目を向けさせたい、小佐内にも良いところを見せて褒めてもらいたいという思いから頑張っていると思えば、認められないもこともなかった。
その瓜野の探究心が、意外な方向へと進んだことで緊張感がグッと高まる。火を付けているのはもしかしたら……。そんな疑念を裏打ちするような要素が散りばめられていった先で、いよいよ真相が暴かれると思われた第16話「真夏の夜」を観て、国内のみならず全世界に衝撃が走った。
#Shoshimin knocks it out of the park with an absolutely BRILLIANT episode centered on ONE conversation! Osanai utterly destroys Urino's entire perception of the case and his own intellect in such an unsettling way! A true masterclass in editing, voice acting and overall direction https://t.co/GLU8ztNp8c pic.twitter.com/ojMI55Rq25
— Evan (@HarrisHarrisev9) May 11, 2025
Osanai utterly destroys Urino's entire perception of the case and his own intellect in such an unsettling way! (小佐内は、瓜野の事件に対する認識と彼自身の知性を、あまりにも不穏な方法で完全に破壊し尽くしています)
ポストされたこの一文だけでも、何か恐ろしいものの片鱗を味わわされたことが伺える。