イ・ビョンホンの“最高”がここに 『スンブ:二人の棋士』は囲碁が分からなくても面白い!

そして『スンブ:二人の棋士』を語る上で欠いてはいけないのが豪華キャスト陣による芝居である。世界トップ棋士であるチョ・フニョンを演じるのは言わずもがな世界的大スターであるイ・ビョンホン。そしてチョ・フニョンの内弟子であり、やがて最大のライバルにまで成長する青年棋士イ・チャンホは『ベテラン』(2015年)などで知られるユ・アイン。そのほかにも『ハード・ヒット 発信制限』(2021年)チョ・ウジンなど、豪華キャスト陣が物語を彩る。ユ・アインの演技もチョ・ウジンの演技も素晴らしく、物語にさらなる魅力を提供してくれるのだが、しかし観るものを圧倒してくれるほどの演技を見せるのはやはり、チョ・フニョン役を演じるイ・ビョンホンである。

チョ・フニョンは名実ともに世界トップ棋士だ。「自分は最強である」という自負を持ちながら、クソ野郎というほどではない。絶妙なキャラクターがイ・ビョンホンのスター性にマッチしている。さらにイ・ビョンホンの演技の凄味を感じさせるのが対局シーンだ。囲碁のルールが全くわからないのにも関わらず、イ・ビョンホンの表情の機微や指先の動き、ちょっとした吐息で画面に引き込まれる。派手さのない、過剰にドラマチックでもない、むしろ抑制のきかせた演技なのだが、「引力」と言う他ない演技力を見せる。改めて「世界的スター」とはこういうことなのだと、見せつけられた気分だ。
『スンブ:二人の棋士』はつまるところ、総合芸術的傑作である。あらゆる要素が密接に絡み合い、共鳴し、映画を痺れるほど面白いものにしている。筆者は人体が大変なことになる過剰なバイオレンス映画が好きだが、こういう映画もやはり「映画館で観たい」と思わされる。とはいえ、気軽に観られるというのも配信映画の強みだろう。そして囲碁のことを散々地味と言ったが『スンブ:二人の棋士』を観たあとなら、「勝負」に人生をかけた棋士たちがひしめく奥深い世界であることがわかる。というわけで『スンブ:二人の棋士』はとんでもなく面白いのでおすすめだ。
■配信情報
『スンブ:二人の棋士』
Netflix独占配信中
出演:イ・ビョンホン、ユ・アイン
監督:キム・ヒョンジュ
脚本:キム・ヒョンジュ、ユン・ジョンビン






















