『ぼのぼの』など充実のトークイベントも 「新宿東口映画祭2025」注目作品を一挙紹介!

開業から140周年を迎えた新宿駅は、いま再開発計画が進み、かつてないほどの変化のただなかにある。駅の顔の一つ、小田急百貨店本館の解体が完了し、48階建ての高層ビルが建設される。駅周辺が生き物のように姿を変え続けているなか、街のシンボルの一つだった、若者文化の象徴として知られた新宿アルタも、その歴史に幕を下ろした。
そんな時代のうねりのただなかで、今年も“あの映画イベント”が幕を開ける。「新宿東口映画祭」である。
「新宿東口映画祭」とは、長年の間、街の歴史とともにあった映画館、「新宿武蔵野館」と、ミニシアターブームを牽引してきた「シネマカリテ」という、二つの映画館で開催される、新宿駅のすぐそばでおこなわれる映画祭だ。

ここでは、新宿東口映画祭の内容を紹介しながら、映画ファンはもちろん、これまで「映画祭」に足を運んだことのない人にも、配信サービスが普及し映画館で映画を観る機会が減りつつあるいまの時代に、“新宿の街で映画祭を楽しむ意味”を提案していきたい。映画への情熱に溢れた、多様な趣味に対応したイベントの中には、あなたの琴線に触れるものが、必ずあるはずだ。
開催第5回目となる2025年のテーマは、「映画でよむ」。「本」をテーマにした作品や、詩、小説や漫画など、力を持った原作のある作品が、人気作品の中からセレクトされた。今回の「映画祭ナビゲーター」に就任した、映画ライターのよしひろまさみちは、「表層の娯楽的体験だけでなく、観る人それぞれにこれからの人生を豊かにする“何か”を受け止められる作品群が揃っています」とコメントしている。

上映作の一つ、三浦しをん原作の『舟を編む』(2013年)は象徴的だ。松田龍平、宮﨑あおい出演で石井裕也監督が描く、辞書編集部で働く人々の物語は、言葉を通して現実の世界を“読むように”仕事の不思議さを映し出している。

同じく石井裕也監督作として、最果タヒが“詠んだ”詩集を映画化した、石橋静河、池松壮亮出演の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)も上映。一部の回において、石井裕也監督とミヤザキタケル(映画アドバイザー)のトークショーが予定されている。

今年生誕100年を迎える三島由紀夫の異色SF小説を映画化した、リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛出演の『美しい星』(2017年)も上映される。監督の吉田大八は、よしひろまさみちとともに、一部上映回後のトークショーに参加する。吉田大八監督作として、吉田和正原作、堺雅人が実在の結婚詐欺師を演じる『クヒオ大佐』(2009年)も上映プログラムにタイトルを連ねた。

三島由紀夫のドキュメンタリー作品『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』(2020年)の上映も貴重。三島が自決する1年前に、東大全共闘とおこなった討論の映像、そして関係者のインタビュー映像を通して、難解な三島の人物像を観客が“読んでいく”作品となっている。
人気漫画の初のアニメ化作品である『ぼのぼの』(1993年)の一部上映回の後には、原作者・いがらしみきおと藤津亮太(アニメ評論家)のトークショー、さらに、ぼのぼのが来場し、15名限定でいがらしみきおサイン会も開催される(サイン会用鑑賞券は完売)。