『サンダーボルツ*』『ターミネーター2』 “主人公化”するヴィランが象徴する善悪の彼岸

もちろん、ヴィランを主人公に据えるには慎重さも求められる。過去の悪行をなかったことにしてしまえば、物語のリアリティや倫理観が損なわれる恐れがあるからだ。重要なのは彼らが過去と向き合い、葛藤して変化していく過程だ。T-800がジョンとの関係を通じて人間的な感情を見せたり、ショウがファミリーの一員として絆を築いたりする描写を通じて、彼らの成長が感じられるからこそ、観客は彼らを“主人公”として受け入れるようになっていく。
結論として、敵だったキャラクターが主人公になる流れは、現代の価値観を反映すると同時に、映画というメディアに新しい命を吹き込んでいる。かつて相容れなかった者同士の共闘による緊張感やヴィラン特有の強烈な個性、そして善悪の境界が揺らぐことで生まれる物語の深みーーこういった要素が複雑に絡み合うことで新しい可能性を切り開くのだ。
上述の例以外にも、ヴィランを主役にした作品が次々に誕生している。現在公開中のマーベル映画『サンダーボルツ*』では、ヴィランが集結したチームが活躍する。また、ホラー映画『M3GAN/ミーガン』の続編『M3GAN 2.0(原題)』では、前作で暴走したAI搭載の人形ミーガンが人間と共闘する可能性が示唆されている。さらに、2025年11月に日本公開予定の『プレデター:バッドランド』でも、プレデターが主人公となり、エル・ファニング演じる謎の少女と協力関係になるようだ。
エル・ファニング『プレデター:バッドランド』11月7日公開へ 壮絶な戦いを予感させる特報も
映画『Predator: Badlands(原題)』が『プレデター:バッドランド』の邦題で11月7日に公開されることが決定。あわ…こうした作品の登場は、ヴィランという存在が持つ可能性に観客も製作陣も確信を深めている証ではないだろうか。枠にとらわれないキャラクター設定と物語が、映画界にさらなる進化と興奮をもたらし続けてくれることを期待したい。
■公開情報
『サンダーボルツ*』
全国公開中
出演:フローレンス・ピュー、デヴィッド・ハーバー、セバスチャン・スタン、ワイアット・ラッセル、オルガ・キュリレンコ、ハナ・ジョン=カーメン、ジュリア・ルイス=ドレイファス
監督:ジェイク・シュライアー
日本版声優:田村睦心、白石充、大塚明夫、藤貴子、鈴木達央、田中理恵、中村千絵、梶裕貴、伊瀬茉莉也
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 MARVEL






















