細田佳央太が『あんぱん』で切り開く新境地 原豪が持つ“背景”を静かに体現

放送中の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)を観ていて、俳優・細田佳央太の仕事ぶりに感動している。同じような方が多いのではないだろうか。レギュラーメンバーとしてほとんど毎日のように登場していながら、いつも控えめに、物語の本筋に寄り添うスタンスを崩さない。出番は多いが、目立つ瞬間は多くはない。しかし、だからこそというべきか、細田に対する信頼度が日に日に増しているのである。
本作は、誰もが知るあの『アンパンマン』の生みの親である夫婦をモデルに、ヒロイン・のぶ(今田美桜)と柳井嵩(北村匠海)の激動の生涯を描いていくものだ。私たちはこの作品をとおして、幅広い世代から愛され続けている不朽の名作の誕生秘話やその背景に迫っていくこととなる。のぶは女子師範学校へ進み、嵩は絵の世界で生きていくと決意した。『アンパンマン』の誕生に向かって、物語が大きく動き出したところだ。
そんな本作で細田が演じているのは、原豪という若き青年。のぶの祖父・釜次(吉田鋼太郎)のことを尊敬してやまない人物だ。石工として「朝田石材店」で働き、朝田家の面々と寝食をともにしている。ヒロインののぶにとっては家族同然の存在である。「朝ドラ」はヒロインの人生を描くもの。だからのぶの人生を見守る私たちにとっても豪は、やはり家族のような存在になっているのではないだろうか。

本作の公式ガイドである『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 あんぱん Part1』にて細田は、「豪は15歳のときに釜次さんに弟子入りし、朝田家に住まわせてもらっています。豪にとって釜次さんは、石工の師匠であると同時に、読み書きから男としての生き方まで教えてくれる第二の父。時を重ね、朝田家のみんなが家族のような存在になっていきます」と述べている。原豪という人物のバックグラウンドについて語っているのだ。
これらのことがドラマの本編でじっくりと描かれたことはなかった。サイドストーリーなのだから当然だ。けれども細田の発言には、「やはりそうか」と誰もが頷くに違いない。具体的なシーンやセリフがなくとも、ただ朝田家の空間に存在することで、細田は豪と朝田家との関係を示してきたのだ。さらに細田は「口数は少ないですが、豪の心は常に朝田家に寄り添っています」と続けている。





















