異例のヒット『教皇選挙』、拡大公開へ 作品世界と現実世界のシンクロはまだ続く

異例のヒット『教皇選挙』、拡大公開へ

 4月最終週の動員ランキングは、『名探偵コナン 隻眼の残像』が週末3日間で動員113万6000人、興収16億6900万円をあげて2週連続1位に。公開から10日間の動員は431万6500人、興収は63億4900万円。オープニング3日間の成績では昨年公開の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』から約3%上回っていたが、10日間では逆に約3%下回ることに。もっとも、ゴールデンウィークの祝日の入り方などの違いもあるので、これは誤差の範囲だろう。いずれにせよ、最終興収158億円を記録した前作とほぼ同水準のペースで数字を積み上げている。

 2位と3位には、先週の予想通り外国の実写映画と日本の実写映画の期待作がランクインした。初登場2位となったのは、世界売上本数が3億本を突破した人気ゲームの実写化作品『マインクラフト/ザ・ムービー』。オープニング3日間の動員は43万5000人、興収は5億9400万円。初登場3位となったのは、結城真一郎のミステリー小説を大森元貴と菊池風磨のダブル主演で映画化した『#真相をお話しします』。オープニング3日間の動員は35万8000人、興収は4億8700万円。いずれの作品も観客のリアクションが良く、初動型の作品では終わらない気配があるので、今後の推移を見守る必要がありそうだ。

 トップ10の半分以上、6作品が初登場する中で、粘り強いどころではない大健闘を見せているのが6週連続トップ10入り、先週末は9位につけている『教皇選挙』だ。順位こそ7位から9位に落ちたものの、ここにきて興収では前週を上回っていて、公開から39日間の動員は36万4700人、興収は5億2800万円。この数字は、今年のアカデミー賞の作品賞にノミネートされた日本公開作品の中では、『ウィキッド ふたりの魔女』、『デューン 砂の惑星PART2』に次ぐ3番目の成績。作品の製作費や日本での公開規模を考えるとそれだけでも快挙なのだが、今週末(5月2日)から日本全国での拡大公開が決定したことで、『デューン 砂の惑星PART2』の最終興収7.7億円を超えるのはほぼ確実、場合によっては10億円の大台を狙える状況が整った。

 『教皇選挙』が公開されたのは3月20日。3月3日に開催されたアカデミー賞授賞式の2週先ということで、結果次第ではアカデミー賞効果も大いに期待できる公開日に(それを狙って)設定されていたわけだが、結果的には8部門ノミネートされながら受賞したのは脚色賞のみに終わった。ところが、公開初週から予想を超える動員を記録し続けることに。この段階では、公開規模が小さかったため劇場では満席状態になることが頻発していて、それがもともと高かった口コミでの評判を加速させることとなった。

 さらに、4月21日にローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が88歳で亡くなられたことで、ただでさえリアリティの高かった作品世界が現実世界とシンクロすることに。世界中の要人が集まった4月26日の葬儀の模様も含め、メディアが取り上げるニュースがそのまま作品の周知につながるという異例の事態となった。実際の教皇選挙(コンクラーベ)が開始するのは5月7日なので、ここからさらに作品の注目度が高まることが予想される。いずれにせよ、「計算のできないヒットには計算のできない事態あり」な異例の興行となっている。

■公開情報
『教皇選挙』
全国公開中
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニ
監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
原作:ロバート・ハリス『CONCLAVE』
配給:キノフィルムズ
提供:木下グループ 
2024年/アメリカ・イギリス/英語・ラテン語・イタリア語/カラー/スコープサイズ/120分/原題:Conclave/字幕翻訳:渡邉貴子/G
©2024 Conclave Distribution, LLC.
公式サイト:https://cclv-movie.jp
公式X(旧Twitter):https://x.com/CCLV_movie

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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