『虎に翼』と“繋がる”『あんぱん』の世界 のぶは「お国のため」の考えにどう染まる?

『あんぱん』のぶにとっての過酷な学校生活

 そんな嵩に「兄貴、知っちゅう?」と千尋が見せたのは、共亜事件について書かれた新聞の記事だ。共亜事件といえば、前々作の朝ドラ『虎に翼』の第5週で取り上げられた贈収賄事件のこと。1934年に実際に起きた「帝人事件」を基にしていると考えられ、不正な株式売買によって利益を得た大物政治家や、取引の実務に関わったヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の父で銀行員の直言(岡部たかし)ら16人が逮捕・起訴された。子どもの頃から朝ドラのファンであることを公言する脚本家・中園ミホらしい粋なサプライズコラボに、思わず嬉しくなった視聴者も多いのではないだろうか。

『虎に翼』共亜事件のモデル? 昭和初期の日本を揺るがした「帝人事件」を解説

NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第17話で、寅子(伊藤沙莉)がよね(土居志央梨)や涼子(桜井ユキ)といった“いつものメンバー”に…

 なお、『虎に翼』では最終的に全員無罪となるが、嵩たちが生きる世界ではまだ判決が出ていない様子。しかしながら、無実を訴える人々のために奮闘する弁護士たちの姿に心を打たれた千尋は「わしは正しいことが正しゅう認められる世の中にしたいがよ。そのために一日でも早う法の道に進みたい」と嵩に熱い胸の内を語る。

 それに触発され、「ほんとは絵を描きたいんだ。絵を描いて生きていきたい」とついに本音を口にした嵩。本当はもっと前から嵩の中では心が決まっていたに違いない。だが、亡き父・清(二宮和也)のように立派な人間になって登美子(松嶋菜々子)を喜ばせてあげたい、自分を受け入れてくれた寛や千代子に恩返しをしなくちゃいけないという意識に囚われていたのだ。

 皮肉にも登美子と再び生き別れたことで、その呪縛から解き放たれた嵩は「何のために生まれて、何をして生きるのか」という寛の問いに対する自分なりの答えに辿り着くことができた。これからは「誰かのため」ではなく、「自分のため」に生きていくのだろう。そうなってくると心配なのはむしろ、のぶのほうだ。良くも悪くも順応性が高い彼女は女子師範学校で「お国のため」という愛国心を植え付けられ、少しずつその考えに染まってしまうのではないだろうか。のぶと嵩の道が大きく分かたれる予感で胸騒ぎがする回となった。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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