『あんぱん』が描いた呪縛からの解放 母との2度目の別れの先に“嵩”北村匠海を待つものは

『あんぱん』が描いた“呪縛”からの解放

 そこにあるのは登美子からの解放だ。登美子からの期待にはいつも亡き夫の清(二宮和也)という存在があった。父を超える秀でた人になってほしいという思いから、登美子は柳井家の跡継ぎに嵩を推薦し、高知第一高等学校を目指すことになった。傍から見れば、登美子は嵩を翻弄する毒親でしかないが、複雑ではあるものの登美子の嵩への愛情は本物で、嵩もまた登美子からの愛情を感じていた。その絶妙なラインを、セリフ以上に北村匠海と松嶋菜々子の芝居が表していたように思う。

 “独りぼっち”だと落ち込む嵩だが、逆に考えればそれは漫画家という未来へ向かうための、呪縛からの解放。草吉(阿部サダヲ)の「1回こっきりの人生だ、自分のために生きろ」、寛の「泣いても笑うても日はまた昇る。絶望の隣はにゃ、希望じゃ」という言葉が、嵩の心を朝陽よりも眩しく照らしてくれている。

 第4週時点から異彩を放っている女子師範学校の教師・黒井雪子(瀧内公美)の本格出演となる第5週では、蘭子(河合優実)を巡る豪(細田佳央太)、岩男(濱尾ノリタカ)との恋模様も描かれていくようだ。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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