『あんぱん』北村匠海と今田美桜が立つ人生の岐路 合格発表の先にある“夢”を掴めるか

『あんぱん』人生の岐路に立つのぶと嵩

 『あんぱん』(NHK総合)第19話では、受験という人生の通過点を前に、それぞれの胸の内が揺れ動く。のぶ(今田美桜)は女子師範学校の面接で思わぬ壁にぶつかり、嵩(北村匠海)は夢と現実のはざまで答えを見いだせずにいる。家族の支え、母の期待、そして自分の本当の気持ち——進む道を選ぶことの難しさと、それでも立ち止まらずに前を向こうとする姿が、静かに胸を打つ回となった。

 嵩だけではなく、のぶも女子師範学校を受ける日を迎えていた。試験科目の裁縫に苦戦しながらも、彼女なりの誠意と明るさで臨もうとしていたその姿に、ふとこちらまで背筋を伸ばしたくなる。だが、彼女がぶつかったのは試験の難しさよりも、面接の緊張感溢れる雰囲気だった。

 「足が速いんです!」と元気に自己アピールしたのぶに対し、面接官は淡々と、「なぜ遅刻しそうになったのか」と詰める。正直に話しすぎた彼女は、「ここは悩みを相談する場所ではありません」ときっぱり釘を刺されてしまう。夢に向かって走ってきたのに、つまずいたのは“正直さ”だったという現実が、朝ドラらしい皮肉を帯びていた。

 それでも、受験を終えて帰宅するのぶの表情はどこか晴れない。家族の問いかけにも、うまく言葉が出てこない中で、ひとり駆け込んできたのは嵩だった。高知第一高等学校を目指している嵩は、のぶのおかげでなんとか試験を受けることができたのだという。家では登美子(松嶋菜々子)が合格の前祝いとして赤飯を炊いている始末。あまりにも気が早すぎると思ったが、その期待に対して寛(竹野内豊)が「もしも落ちとってもそれで人生が決まるわけやない」という言葉にふっと場の空気が和らいだ。焦りや不安を言葉にできずにいた嵩にとって、その一言はまるで救いのようだったのかもしれない。結果がすべてではない。その先にどんな道を歩くのかが大切だと、寛はいつも静かに伝えてくれる。

 嵩が本当に向き合っているのは進路ではない。自分の心だ。漫画を描くときの嵩は、どこか幼い頃の顔に戻る。寛に促されるまでもなく、それが彼にとっての好きの源なのだと、視聴者には伝わってくる。だが、それを言葉にするのは、どうしてこんなにも難しいのだろうか。登美子に「次は医学部受験に向けて頑張らなきゃ」と詰め寄られたときの、あの言いよどむ姿が切ない。母の期待と、自分の夢。その間に立って動けなくなる嵩の気持ちもよくわかる気がした。

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