“ヤスケン劇場”はまだまだ続く! 安田顕=平賀源内を刻みつけた『べらぼう』での名演

『べらぼう』安田顕=平賀源内を刻んだ名演

 そしてこの安田の名演が生まれた背景には、森下佳子による優れた脚本があったことにも触れておかなければならない。奔放でありながら繊細、才に溢れ世捨て人としての矜持を持つようでありながら、実のところ名誉欲に支配されている……。対する人によって多様な顔を見せる源内を“愛らしさ”で包み、1人のキャラクターとして作り上げた森下の脚本は見事である。

 安田も森下が紡いだセリフを絶賛している。「半歩先であれば優秀な人だと認識されるところ、一歩も二歩も先を行っている源内さんは、ともすると、よくわからない人に見えてしまいます。でも、お抱えにならなかったからこそ日本中を自由に旅して、たくましさやユーモアも培うことができたわけです。こうしたせりふの一つ一つの積み重ねで源内さんの中身を自然とお見せできるはず……。演じていくうちに、“適当な人に見せる”とはなるほどこういうことなんだなとつかんでいきました」と解釈を語る。(※)

 蔦重に対して耕書堂と名付け、「本屋ってのはずいぶんと人にツキを与えられる商いだって、俺は思うけどね」と励ましたり、「我儘に生きることを、自由に生きるっていうのさ。我儘を通してんだから、きついのはしかたねぇや」と笑い飛ばして見せる。印象に残る数々のシーンを思えば、安田演じる源内は常に名演だったとさえ言ってしまいたくなるが、森下脚本との相性が抜群だったことがその大きな要因だろう。

 そんな安田は言わずと知れた“カメレオン俳優”。前クール放送のドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)では野心を抱く“クレバー”な役で、現在放送中のドラマ『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』(日本テレビ系)では“ドS上司”役。演じ分ける安田の演技力は圧巻であり、もはやこちらの感情の方が追い付かない。

 『べらぼう』で源内役として有終の美を飾った安田だが、“ヤスケン劇場”の幕が降りる気配は当分ない。

参照
※ https://www.nhk.jp/p/berabou/ts/42QY57MX24/blog/bl/pG3k57WNaG/bp/pjQ30ZmbxB/

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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