『あなたを奪ったその日から』が描く愛情と復讐の相克 北川景子の静かな迫力に圧倒される

思いがけない運命に巻き込まれる紘海に代わって、ドラマに補助線を引くのが週刊誌記者の東砂羽(仁村紗和)である。アレルギー物質混入の原因を探り、結城の疑惑を追及する中で被害者の心理を想像し、それが予測可能性を与える。紘海の主観と砂羽の客観が並走することで、視聴者は偏りなくドラマの世界に没入できる。
今後の展開をタイトルから考えてみたい。「あなた」は紘海によって奪われた萌子で、命を奪われた灯と萌子が重なり合う。「その日から」何かが変わった、あるいは何かが起こる。それは外界の事象かもしれないし、紘海の内面かもしれない。第1話の冒頭とラストで「愛と憎しみはとても似ている」の台詞が繰り返された。これは紘海の心の声として発されたほぼ唯一のモノローグであり、憎しみから愛着へ転化する過程を写し取っていた。
他人の子どもを自分の子どもとして育てるというストーリーは、多くの作品で繰り返された王道のモチーフである。主人公が抱える愛情と母性、母と娘が抱く葛藤を、あえて血のつながらない他人を介在させることによって浮き彫りにするもので、名女優が記憶に残る演技を披露してきた。北川景子について言えば、『あなたを奪ったその日から』の第1話で、復讐心に駆られた母親が殺そうとした相手の「お母さん」になるまでを、針に糸を通すような集中力で演じきっており、新たな母親像の構築に成功したと言っていいだろう。
本作のポイントは愛情と復讐の相克である。人間は愛しながら憎む生きもので、だからこそこのテーマは掘り下げる価値がある。また、自己責任論と育児の境界にも鋭いまなざしを向けており、大化けするポテンシャルを秘めた一作である。
サスペンスフルなストーリーの中で生まれる親子愛を描く物語。『アルジャーノンに花束を』(TBS系)、『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS系)の池田奈津子が脚本を手がける。
■放送情報
『あなたを奪ったその日から』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、仁村紗和、平祐奈、阿部亮平(Snow Man)、水澤紳吾、小川李奈、一色香澄、田山由起、内藤秀一郎、原日出子、鶴田真由、大浦龍宇一、中原丈雄、筒井道隆、大森南朋
脚本:池田奈津子
演出:松木創
企画:水野綾子
音楽:村松崇継
主題歌:back number「ブルーアンバー」(ユニバーサル シグマ)
プロデューサー:三方祐人
制作:カンテレ、共同テレビ
©︎カンテレ
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