『秘密』最終話が示したこの世界を愛するということ 薪と青木の物語は新章へ

『秘密』薪と青木の物語は新章へ

 青木と鈴木の違いについて、最終話に至って筆者の中で結論が出た。薪にとって鈴木は並走する盟友で理解者だ。振り返ればそこにいるのが鈴木。それに対して、青木はたとえ無視しても必ずそこにいる人間だ。薪は心が壊れている。それは彼の言動や自らを投げだす言動からわかる。本質的に愛にあふれているにもかかわらず、自らを愛することができない。それが薪である。

 愛することが真ん中にある青木は、愛する家族を失っても、それでも世界を諦めない。どんな人間も生まれながらの悪人はいないと信じている。ある意味で究極のお人よしで、損得勘定が働かないタイプだが、結果的にそれが薪を救うことになる。青木になら、薪は背中を預けることができるのだ。そのことを端的に示す「薪さん、好きです」は青木一行という人間の本心だが、誰もが言える言葉ではない。にもかかわらず、その言葉が嘘じゃないとわかるのは、私たちが日々生きる中で求め傷つきながら、どうにかして愛そうとするからだ。

 結論から言うと、他人の心はわからない。わからないけれど、愛することはできる。その対象が自己であれ、他人であれ、人間は愛することをやめられなくて、それこそが罪なのかもしれない。心を見つめ続けた『秘密』は最終的に愛に帰着した。「急がなくていい。待っているから」は、薪剛という人間のこの世界へ向けた愛の告白でもあるのだろう。

『秘密~THE TOP SECRET~』の画像

秘密~THE TOP SECRET~

人気漫画『秘密-トップ・シークレット-』を実写ドラマ化するヒューマンサスペンス。科学警察研究所の法医第九研究室、通称“第九”を舞台に、室長の薪剛と新米捜査員の青木一行のバディが、解決不可能とされていた事件の真相を解き明かしていく。

■配信情報
『秘密~THE TOP SECRET~』
TVer、FOD、Netflixにて配信中
出演:板垣李光人、中島裕翔、門脇麦、高橋努、鳴海唯、利重剛、眞島秀和、國村隼ほか
原作:清水玲子『秘密-トップ・シークレット-』『秘密 season0』(白泉社『メロディ』連載)
脚本:佐藤嗣麻子
演出:松本佳奈、宝来忠昭、根本和政、稲留武
プロデューサー:豊福陽子、近藤匡、近藤多聞
音楽:小島裕規“Yaffle”
主題歌:「Iris」BUDDiiS(SDR inc.)
制作協力:C&Iエンタテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/top-secret/
公式X(旧Twitter):https://x.com/himitsu_ktv
公式Instagram:https://www.instagram.com/himitsu_ktv/
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