小野賢章が挑む“感情を引きずらない”演技 『ユア・フォルマ』ならではのバディ関係

小野賢章が挑む“感情を引きずらない”演技

 第27回電撃大賞・大賞受賞作品『ユア・フォルマ』が、待望のTVアニメ化。ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、やがて日常に不可欠な脳侵襲型情報端末〈ユア・フォルマ〉へと進化した。〈ユア・フォルマ〉には、見たもの、聴いたこと、そして感情までもが記録される。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。

 世界最年少で電索官の任に就いた天才少女エチカ・ヒエダ。だが、その才能ゆえに孤立する彼女の新たな相棒として選ばれたのは、金髪碧眼のヒト型ロボット〈アミクス〉のハロルドだった。

 そんな2人の関係を描くTVアニメ『ユア・フォルマ』で、ハロルドを演じたのは小野賢章。AIやロボット技術の進化が加速する現代において、本作は人間とロボットの境界線や関係性を深く掘り下げている。果たして、小野はこの作品の魅力をどのように感じたのか。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

ハロルドとエチカは“複雑で深みのある関係性”

ーー本作では、人々の記憶が脳内に埋め込まれた情報端末「ユア・フォルマ」に記録される世界が描かれています。視覚的にも楽しめるポイントが多いと思いますが、映像を最初に観たとき、どんなことを感じましたか?

小野賢章(以下、小野):古いヨーロッパの街並みを思わせる建物の中に、この作品特有の技術がすごく自然に溶け込んでいて、「ああ、こういう世界なんだな」って一気に引き込まれましたね。「アミクス」と呼ばれる人型ロボットが登場していて、高度な人工知能を備えているんですけど、その中でもハロルドみたいな特別な存在は、ほぼ人間と見分けがつかないくらい精巧に作られているんです。人間同士では生まれないような、微妙な溝や感情のすれ違いがすごく丁寧に描かれていて、それが物語の奥行きを生んでいると感じました。エチカがハロルドを人間のように思ってしまったことで生じる誤解もあって、普通のバディものとはまた違う、より複雑で深みのある関係性になっていると思います。

ーーバディものは「2人の信頼関係ができるまでの過程」を楽しむのも醍醐味です。本作も、人間とロボットであるエチカとハロルドならではの関係の築き方から目が離せなくなります。

小野:そうなんですよね。ただの信頼関係だけでは埋められない、人間とロボットならではの隔たりがあって、そこが物語を進める中でとても面白いポイントになっているわけです。それに、この作品の根幹にある「敬愛規律」という概念もすごくユニークだと思いました。ロボットたちが社会の中で普通に受け入れられているのは、この規律があるからこそで。でも、それが「本当に意図した通りに機能しているのか? 」というのは、視聴者の皆さんにもぜひ考えながら観てもらいたいです。ハロルドの発する一言一言にも、彼がどういう思考プロセスを経てその言葉を選んでいるのか、じっくり注目するとより楽しめると思います。

ーーこれまでさまざまな作品を演じられてきた小野さんですが、演じる上での“バディもの”ならではの面白さはありますか?

小野:お芝居って、結局のところコミュニケーションそのものだと思うんです。相手とやり取りすることで、自分の芝居も影響を受けて変わっていく。そこにすごくやりがいを感じますし、バディものの面白さもまさにそこにあると思います。バディものって、基本的に「お互いを信頼しているからこそ成り立つ関係」が中心に描かれることが多いですよね。何かあっても揺るがない。「きっとあいつはこういう意図があって、こういう行動をしてるんだろう」って信じて突き進んでいく。そういう関係性が土台にある作品が多いんですけど、『ユア・フォルマ』はちょっと違うんです。

ーーといいますと?

小野:最初から確立された信頼関係があるわけじゃなくて、人間とアミクスの違いを理解しながら、少しずつ距離を縮めていく。その過程で生まれる揺らぎや不安定さがあるからこそ、物語が面白くなっているんですよね。普通のバディものでは起こらないようなことが、この作品ならではのバディ関係だからこそ起きる。そこが『ユア・フォルマ』ならではの魅力なのかなと思います。

——演技の面では、ロボットらしさを意識するのではなく、人間に寄せるような演技を意識されたのでしょうか?

小野:そうですね。基本的には「自分はロボットだ」という意識をあまり強く持たずに演じました。ハロルドやアミクスたちは、人間の言動やシチュエーションごとの振る舞いを学習して、それを表現しているという前提があるとのことで。収録が始まる前に、その点についても詳しく説明を受けました。しかもハロルドは高性能モデルなので、微妙なニュアンスまで理解し、寄り添うことができる。現実でも、ロボットが人間らしく振る舞うほど、逆に違和感を覚えることがあると思うんですが……。ハロルドの場合、その「不自然さ」が極限まで取り除かれているんです。普通のアミクスとの差を自然に表現するためにも、演技では「ロボットらしさ」を強調せず、できるだけナチュラルに演じました。結果的に「ほぼ意識せずに演じる」という方向性になったと思います。

——原作は小説で、コミカライズもあります。コミカライズ版ではハロルドの人間らしい一面がより強調されているようにも思いましたが、そうした違いをどう感じていますか?

小野:僕もコミカライズ版を読ませていただきましたが、ハロルドはかなり表情豊かで、おちゃめな一面が描かれているのが印象的でした。ただ、アニメは事件を軸に進んでいくストーリーなので、コミカライズほどの表情の豊かさは表現できなかったかもしれません。日常回があれば、ハロルドのかわいらしい一面やユーモラスな部分も描けたかもしれませんが、アニメはアニメとしての世界観があるので、そこに沿ったハロルドを楽しんでもらえたらうれしいです!

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