『ジークアクス』アニメ版の展開を考察 「キラキラ」「シャロンの薔薇」は何を意味する?

また『ジークアクス』ではシリーズお馴染みのマスコットキャラクター・ハロが出てくるが、これも1つの大きな謎と言っていいだろう。そもそもハロはアムロが発明、もしくは既製品からのアップグレードで生み出したものだった。そして1年戦争の終結後、英雄・アムロの知名度を背景としてハロの量産品が出回ったという経緯がある。
そうなると、『ジークアクス』に出てくる高性能なハロは一体どこから来たものなのか気になるところ。あくまで想像でしかないが、もしかすると戦争に参加せず、一般市民のままだったアムロがメカニックとしての技術を活かした仕事に就き、ハロを開発したのではないかと考えたくなる。
もう1人、動向が気になるキャラクターといえば“セイラ・マス”ことアルテイシアだろう。『ファースト』では優秀なパイロットでありながらもアムロの影に隠れていたが、『ジークアクス』ではアムロの不在によって、地球連邦を代表するエースパイロットとして奮闘している。言うまでもなく、セイラはシャアの妹でもあるため、今後TVアニメ版で重要な位置を占めたとしてもおかしくはなさそうだ。
さらに言えば、『ファースト』の続編である『機動戦士Ζガンダム』にて、シャアはクワトロ・バジーナと名乗り、地球連邦政府内の反体制派である「エゥーゴ」の一員として戦っていた。連邦とジオンの関係が逆転している『ジークアクス』の世界では、このシャア=クワトロの立ち位置は、セイラに当てはまるのではないだろうか。やはり何らかの活躍を期待したくなる。
その一方、作品のテーマという観点から考えるなら、「ニュータイプ」の描き方にも注目したい。『ビギニング』豪華版パンフレットのインタビューにて、榎戸は「ニュータイプというテーマは絶対外したくなかった」と語っており、鶴巻監督も最初からニュータイプを扱うことは決めていたと明かしている。そこで重要になってくるのが、同作特有の「キラキラ」についての描写だ。
マチュは「ジークアクス」への搭乗によって、色とりどりに輝く不思議な空間に突入することを体験し、それを「キラキラ」と名付ける。この描写の元ネタは、『ファースト』などで描かれるニュータイプ同士の精神的な交感シーンだろう。
たとえばアムロとララァが戦闘した際、2人は精神世界のような場所でコミュニケーションを行っており、ニュータイプが実現する“人と人が分かりあえる未来”を示唆するような名シーンとなっていた。ただ、その後の作品では必ずしもニュータイプが理想的な未来の可能性として描かれてはおらず、『機動戦士Ζガンダム』ではむしろ“分かりあうことの不可能性”を示している節すらあった。
鶴巻×榎戸コンビの作風を振り返るなら、『フリクリ』ではロボットとの一体化によって全能感を加速させる思春期の少年と、その全能感の挫折が描かれていた。『ジークアクス』では明らかにマチュの全能感が強調されているが、だとするとこの先に待っているのは『ファースト』のような希望を感じさせる展開ではなく、『機動戦士Ζガンダム』のような悲劇なのかもしれない。
ガンダム新作『ジークアクス』に集うスタッフを解説 鶴巻和哉×榎戸洋司コンビへの期待
鶴巻和哉監督に、本格的にスポットライトが当たる日が来た。『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』(以下『ジークアクス』)の…とはいえ、もちろん既存の作品の焼き直しをするだけなら、今あえてニュータイプを取り上げる必要はどこにもない。鶴巻と榎戸には、この図式をさらに超えた何かを表現しようという気概があるはずだ。
なお『ジークアクス』で描かれる宇宙世紀0085は、正史の時系列でいえば、『機動戦士Ζガンダム』の本編が始まる2年前にあたる。同作は主人公のカミーユ・ビダンを筆頭に、ハマーン・カーンやパプテマス・シロッコなど、強力なニュータイプが多数出てくる作品だった。
ニュータイプというテーマと合致することを考えても、『ジークアクス』では『機動戦士Ζガンダム』を意識したような展開が描かれる可能性はある。あるいはむしろ同作への“アンサー”という意気込みから、あえて今ニュータイプを主題にしたのではないか……と想像するのは、飛躍しすぎだろうか。
『ガンダム』ファンの誰も予想していなかった設定によって、大きな話題を呼んでいる『ジークアクス』。TVアニメ版では、劇場先行版をさらに上回るほどの衝撃展開が待っているかもしれないので、心して視聴したいところだ。
■放送情報
『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』
日本テレビ系にて、4月8日(火)スタート 毎週火曜24:29〜放送
キャスト:黒沢ともよ、石川由依、土屋神葉
制作:スタジオカラー/サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:鶴巻和哉
シリーズ構成:榎戸洋司
脚本:榎戸洋司、庵野秀明
キャラクターデザイン:竹
メカニカルデザイン:山下いくと
アニメーションキャラクターデザイン・キャラクター総作画監督:池田由美、小堀史絵
アニメーションメカニカルデザイン・メカニカル総作画監督:金世俊
デザインワークス:渭原敏明、前田真宏、阿部慎吾、松原秀典、射尾卓弥、井関修一、高倉武史、絵を描くPETER、網、mebae、稲田航、ミズノシンヤ、大村祐介、出渕裕、増田朋子、林絢雯、庵野秀明、鶴巻和哉
美術設定:加藤浩(ととにゃん)
コンセプトアート:上田創
画コンテ:鶴巻和哉、庵野秀明、前田真宏、谷田部透湖
演出:鶴巻和哉、小松田大全、谷田部透湖
キャラクター作画監督:松原秀典、中村真由美、井関修一
メカニカル作画監督:阿部慎吾、浅野 元
ディティールワークス:渭原敏明、田中達也、前田真宏
動画検査:村田康人
デジタル動画検査:彼末真由子(スタジオエイトカラーズ)、三浦綾華、中野江美
色彩設計:井上あきこ(Wish)
色指定・検査:久島早映子(Wish)、岡本ひろみ(Wish)
特殊効果:イノイエシン
美術監督:加藤浩(ととにゃん)
美術監督補佐:後藤千尋(ととにゃん)
CGI監督:鈴木貴志
CGIアニメーションディレクター:岩里昌則、森本シグマ
CGIモデリングディレクター:若月薪太郎、楠戸亮介
CGIテクニカルディレクター:熊谷春助
CGIアートディレクター:小林浩康
グラフィックデザインディレクター:座間香代子
ビジュアルデベロップメントディレクター:千合洋輔
撮影監督:塩川智幸(T2 studio)
撮影アドバイザー:福士享(T2 studio)
特技監督:矢辺洋章
ルックデベロップメント:平林奈々恵、三木陽子
編集:辻󠄀田恵美
音楽:照井順政、蓮尾理之
音響監督:山田陽(サウンドチーム・ドンファン)
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
主・プロデューサー:杉谷勇樹
エグゼクティブ・プロデューサー:小形尚弘
プロデューサー:笠井圭介
制作デスク・設定制作:田中隼人
デジタル制作デスク:藤原滉平
配給:東宝/バンダイナムコフィルムワークス
宣伝:バンダイナムコフィルムワークス/松竹/スタジオカラー/日本テレビ放送網/東宝
製作:バンダイナムコフィルムワークス
©︎創通・サンライズ
公式サイト:https://www.gundam.info/feature/gquuuuuux/
公式X(旧Twitter):@G_GQuuuuuuX























