桜井ユキを他人事とは思えない 『しあわせは食べて寝て待て』が描く“自分を労る”大切さ

『しあわせは食べて寝て待て』“労る”大切さ

 内見の日、さとこは大家の鈴(加賀まりこ)と出会う。前職でのこともあって人付き合いを避けるようになっていたさとこは、少々おせっかいな鈴が隣に住んでいると知り、最初は躊躇った。決め手となったのは、鈴の家に住む司(宮沢氷魚)が作った野菜と鶏団子のスープだ。そのスープで冷え切った体が温まり、風邪が治って、心までポカポカとしたさとこ。

 後日、スープジャーを返しにいったさとこは90歳なのにピンピンしている鈴の健康の秘訣が、司の作る薬膳ご飯にあることを知る。薬膳と聞くと、高級な食材を使った手の込んだ料理をイメージしてしまうが、実はそうではない。司が言ったように「食材の効能を知って、自分に必要なものを摂ること」、それが薬膳の基本だ。すなわち、「自分を労ること」。もしかしたら、さとこは病気になったことで自信を失い、上手く自分を労われずにいたのかもしれない。主治医からも食事に気をつけてと言われているが、カップ麺やコンビニのサンドイッチでお腹を満たすことしかできなかった。そんな彼女を他人事には思えない視聴者も多いのではないだろうか。果たして、自分はどれだけ自分を労ることができているだろうと考えさせられる。

 それにしても司は不思議な人だ。正直で遠慮のない人だが、嫌な感じがしないのは、その柔らかい雰囲気のなせる技だろうか。鈴はさとこに自分の息子と紹介していたが、それも定かではない。さらに団地に引っ越したさとこは司に薬膳のアドバイスを求めるが、「申し訳ないけど、病人には責任を持てないので」ときっぱり断られてしまった。そんな謎多き隣人と、さとこがこの団地で繰り広げるドラマに興味を惹かれてやまない。

■放送情報
ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:桜井ユキ、宮沢氷魚、加賀まりこ、福士誠治、田畑智子、中山雄斗、奥山葵、北乃きい、西山潤、土居志央梨、中山ひなの、朝加真由美
原作:水凪トリ『しあわせは食べて寝て待て』
脚本:桑原亮子、ねじめ彩木
音楽:中島ノブユキ
演出:中野亮平、田中健二、内田貴史
制作統括:小松昌代(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK

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