鈴鹿央士の引き出しの多さに驚嘆! 『映画ドラえもん』で成立させた“揺らぎ”のある人物像

そうした引き出しの多さに驚かされたのは、以前、鈴鹿がアニメ映画『夏へのトンネル、さよならの出口』で塔野カオル役を演じていたことを思い出したときだった。この作品は『ドラえもん』とはまったく雰囲気の異なる、静かに物語が進んでいくタイプのアニメ映画。鈴鹿が演じたのは、田舎町に暮らす高校生・塔野カオル。「欲しいものが何でも手に入る代わりに年をとってしまう」と噂される“ウラシマトンネル”を発見する人物だ。
そのときのどこか物憂げで内にこもったような青年の声の芝居がとても印象的で、作品全体の繊細な空気感を損なうことなく、鈴鹿はそのニュアンスを丁寧にすくい取っていたのをよく覚えている。
ただ、今回のドラえもん映画はファミリー向けの作品ということもあり、トーンはまったく違う。それでも違和感はなく、むしろ実写で積み重ねてきた親しみやすさや軽やかさが、パルというキャラクターの中に自然に息づいていたように感じた。

さらに、今後はSTUDIO4℃の最新作『ChaO』での主演も決まっている。物語は、平凡な日常を送るサラリーマン・ステファンのもとに、人魚王国のお姫さま・チャオが突然現れ、騒がしくも不思議な日々が始まるというもの。鈴鹿が演じるのは、船舶をつくる会社で働く青年という役どころで、ここでもまた新たな声の表現に出会えそうな予感がする。今回のドラえもんで垣間見せた柔らかさや、絶妙な間のセンスが、次はどんなかたちで響いてくるのか楽しみだ。アニメというフィールドでも、鈴鹿央士の名前を目にする機会が、これからますます増えていくのだろう。
■公開情報
全国公開中
『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』
キャスト:水田わさび(ドラえもん役)、大原めぐみ(のび太役)、かかずゆみ(しずか役)、木村昴(ジャイアン役)、関智一(スネ夫役)、和多田美咲(クレア役)、種﨑敦美(マイロ役)、久野美咲(チャイ役)、鈴鹿央士(パル役)、藤本美貴(アートリア王妃役)、伊達みきお(サンドウィッチマン)(アートリア王役)、富澤たけし(サンドウィッチマン)(評論家役)
原作:藤子・F・不二雄
監督:寺本幸代
脚本:伊藤公志
主題歌:あいみょん「スケッチ」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
挿入歌:あいみょん「君の夢を聞きながら、僕は笑えるアイデアを!」(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
配給:東宝
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2025
公式サイト: https://doraeiga.com/2025/
公式YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/DoraemonTheMovie
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