蒔田彩珠が『御上先生』で見せた新たな表情と奥行き 若手俳優の中で際立つ“存在の温度感”

蒔田彩珠が『御上先生』で見せた新たな表情

 蒔田は7歳で芸能界入りし、10歳で是枝裕和監督によるドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(2012年/カンテレ・フジテレビ系)に出演。以降『海よりもまだ深く』(2016年)や『万引き家族』(2018年)といった是枝作品に名を連ね、2018年に『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で初主演。その後もNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』での永浦未知役、『忍びの家 House of Ninjas』(2024年/Netflix)での俵凪役など、着実にキャリアを積み上げてきた。特に『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』での演技には、演技という枠を超えた生の痛みが宿っていた。言葉がつかえ、伝えたい想いがこぼれていくその感覚を、蒔田は視線ひとつで表現する。誰しもが抱えるコンプレックスや孤独に、真っ直ぐな眼差しを向けていたからこそ、多くの人の心に残る作品となったのだろう。そして第45回報知映画賞助演女優賞を受賞した『朝が来る』で演じた片倉ひかり役は、蒔田の実力を改めて印象づけた。14歳の少女から20歳の女性へと時間の経過と共ににじみ出る感情を、紡がれる台詞よりも余白で描いた演技は、今も蒔田の代表作のひとつとして語られる。

 2025年には主演映画『消滅世界』の公開も控える。川村誠監督は蒔田について「観る者が彼女から目を離せなくなる、シーンを支配してしまうような引力——兼ねてより俳優としての蒔田さんの存在感と演技力に底知れないポテンシャルを感じていました」と語っている(※2)。存在感とは演技力の延長線上にあるものではない。むしろ、そこにいるというだけで成立する説得力。蒔田彩珠という俳優は、まさにその稀有な力を備えている。

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 『御上先生』というひとつのドラマを通じて見えてきたのは、彼女の新たな表情、そして深まる表現の奥行きだった。いまや若手女優の中でも群を抜いた表現力を持つ蒔田。だが、彼女の歩みはあくまでも静かで控えめである。その静けさこそが、時に騒がしい作品の中にあっても心を奪う理由なのかもしれない。次に彼女がどんな景色を見せてくれるのか。その答えは、きっと次の一歩の中にある。

参照
※1. https://mdpr.jp/interview/detail/4479716
※2. https://realsound.jp/movie/2025/03/post-1969950.html

『御上先生』の画像

日曜劇場『御上先生』

「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かうオリジナル学園ドラマ。

■配信情報
日曜劇場『御上先生』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:松坂桃李、奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流、吉柳咲良、豊田裕大、上坂樹里、髙石あかり、八村倫太郎、山下幸輝、夏生大湖、影山優佳、永瀬莉子、森愁斗、安斉星来、矢吹奈子、今井柊斗、真弓孟之、西本まりん、花岡すみれ、野内まる、山田健人、渡辺色、青山凌大、藤本一輝、唐木俊輔、大塚萌香、鈴川紗由、芹澤雛梨、白倉碧空、吉岡里帆、迫田孝也、臼田あさ美、櫻井海音、林泰文、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
脚本協力:畠山隼一、岡田真理
演出:宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデュース :飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修:西岡壱誠
学校教育監修:工藤勇一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs/

 

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