井之脇海×小野花梨だから成立した“粋な純愛” 『べらぼう』の“夢物語”に込められた思い

作中を通して新之助とうつせみが2人でいるシーンは決して多くなかった。それでも2人が想いを寄せ合っていた姿が印象に残っているのは、ただ瀬川と蔦重の物語を際立たせるための存在ではなく、愛し合う2人として井之脇と小野によって血の通ったキャラクターとなっていたためだろう。
思えば新之助はどんな時もよく微笑んでいた。実直で優しい、まっすぐな性格のイメージは、井之脇の人柄によるものだと小野は分析している。小野は井之脇の魅力について「共演させていただいて驚いたのが井之脇さんの持つお人柄が、こんなにも役からあふれ出るんだということ。(中略)新之助さんのたたずまいなど、言葉や形にならない部分にうつせみがひかれたんだということを演じている中で実感することができました。それは井之脇さんご自身の持つ価値観や人生観、これまで積み重ねてきた軌跡などが自然とあふれ出ていたからこそ、より魅力的に映ったんですよね」と語った。(※)
対するうつせみは、女郎たちの中にいながらも人間らしさを捨てずに持っているようなキャラクターで、儚げな表情が似合うキャラクターだった。井之脇は小野の魅力について「うつせみは、随所ににじみ出る人間らしさが魅力です。女郎は芯が強くないと生きていけない職業で、うつせみも彼女なりの信念を持ってはいるけれど、そこに強さだけではない柔らかさや愛らしさが満ちあふれている。それはおそらく小野さん自身が持つパワーだと思うんです」とコメントした。(※)
それぞれの人間的魅力が役から発せられていたと語る2人。『べらぼう』の一癖も二癖もあるキャラクターに囲まれていながらも埋もれずに輝きを放つことができたのは、井之脇と小野だったからこそ、というよりほかないだろう。
夢を持つことは、欲を持つことから始まる。欲は人間誰しもが持っているものであり、夢を持ち、語り、叶えることは何も蔦重のような人物の専売特許ではない。『べらぼう』はあらゆる人間の欲を正面から描き出すからこそ面白いのであり、粋なのだ。作中きっての“粋な純愛”を見せてくれた井之脇と小野の果たした貢献は大きい。
参照
※ https://www.nhk.jp/p/berabou/ts/42QY57MX24/blog/bl/pG3k57WNaG/bp/pGwVrA6Y3m/
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK






















