“恋愛離れ”なのになぜラブストーリーは覇権コンテンツなのか “恋バナ化”の進行が鍵に?

“恋愛離れ”でもなぜラブストーリーは覇権?

 『366日』は一言でいうと「ひだまり」だ。一見従来の王道純愛作品だが実際は本格派の三角関係モノのその先を見せるという少女漫画の進化系でもある。終わった恋の思い出も、人生の「ひだまり」とし、別々の人生を選んでも大切に胸にしまったまま生きていけるという形で恋の素晴らしさを描く。本作においてそれは「音楽」としても手元に残る。

 『ファーストキス 1ST KISS』では恋人と一緒にいる現在と、死別も含めていつか確実に来る恋の終わりという未来の時間が「ミルフィーユ」のように同時に存在する。だから、今そばにある恋は全て奇跡的なものだということを忘れずに大切に向き合うべきだというメッセージを持つ。ここでは約束されたお別れに向けての今ある「時間」と「手紙」を用いることで恋は2人の間に存在し続けている。

『恋脳Experiment』©2023 ぴあ、ホリプロ、電通、博報堂 DY メディアパートナーズ、一般社団法人 PFF

 『恋脳Experiment』では、数々の恋をする中でそれぞれのお相手から求められるものや、好きという感情こそが盲目にしてきた違和感を「呪い」として描いており、主人公の女性はそこから徐々に解き放たれていく。その過程を通して、恋をしなければという思い込みから脱却し、恋以外のモノを大切にすることでたとえ自分1人だとしてもいかに人生は素敵であるかという姿を映し出す。また、彼女はその恋たちを自身の「芸術作品」や「実験」として人生の中へ昇華していくのだ。

 こうして、それぞれの恋は「お別れ」を通して様々に形を変化させて人生に残っていく。たとえ相手がいなくなっても恋をしたという経験は無くならないわけで、それを何に活かすか、勝手に使うかは自分次第。「恋バナ」にだってしてしまえばいい。付き合っていても夫婦だとしても単なる片思いに終わったとしても、きっと「お別れ」は人生を豊かにしてくれる。これが2025年「恋愛離れ」の時代に恋愛映画が示すメッセージなのだ。

『ファーストキス 1ST KISS』©2025「1ST KISS」製作委員会

 結局、傷ついたり失ったりする恋愛とはコスパの悪い代物だろうか。否、断じて否である。失うことこそ恋愛の本質。その経験を酸いも甘いも存分に楽しめばいいのだ。実っても金、終わっても金。恋愛とは捨てるところ無しのコスパ最強コンテンツなのだ。選択肢としての恋をあえて選ぶ。そして、別れた恋の使い道は様々な恋愛映画が教えてくれる時代となった。もちろん恋愛映画を楽しむことそれ自体もその使い道の1つである。皆さん、ガンガン恋をしましょう。

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