テレビドラマ史上初、出雲大社での撮影はなぜ実現? 『ばけばけ』“涙の芝居”の裏側

髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
年明け最初の放送となった第66話では、旅先の杵築でヘブン(トミー・バストウ)が日本滞在記の完成が間近であることをトキ(髙石あかり)と錦織(吉沢亮)に打ち明ける。以前から滞在記を書き終えたら松江を離れると話していたヘブンだが、錦織の問いに「松江いる……いたい」と思いを口に。さらにはトキに「ずっと隣、いさせてください」と、つたない日本語でプロポーズするのだった。
演出の村橋直樹は、この名場面について「編集でだいぶ切っていますが、実際にはそれぞれ自分の人生をもう少し言葉で語っているんです」と舞台裏を明かし、すべての涙はキャストたちが自然に流したものだったと振り返る。

「もちろん3人一緒に芝居していますが、『今からヘブンさんを撮ります』『次にトキさんを撮ります』『最後、錦織さんを撮ります』と、カメラを完全に分けて撮影しました。それぞれに人生を噛み締めて、出し切る芝居をしてもらっている。ですから、カメラが回っている時間よりも、撮影前の環境づくりにすごく時間をかけて撮ったシーンかなと思いますね。スタッフも全員しゃべらず、静かに淡々と作業をして、『やりましょうか』と気持ちを作ってから撮影に入りました」(村橋)
トキの美しい涙も印象深かったが、「髙石さんに関しては、自分にカメラが向いていない撮影でも、すべて泣いていましたね。何回やっても泣いてました」と村橋。
一方、そんなトキに錦織がハンカチを差し出す場面は台本通りだったといい、「つまりは泣くんだろうなとは思っていたわけですが、髙石さんは泣きに行くお芝居をする方じゃないですし、そういうお芝居をする方は今回、現場にはいらっしゃいませんね。別に泣かなければ吉沢さんもハンカチを出さないでしょうし、『台本に書かれているからやります』という人たちではないですから。吉沢さんも泣くシーンじゃなかったのに、『なんか泣いちゃったよぉ』と言っていました(笑)」とキャストへの信頼をにじませる。

もちろん、バストウのト書きにも“泣く”という指示は一切なく、村橋は「トミーさんは自ら泣く芝居をあまりしない人なので、『ああ、そうか。ここで泣くんだな』と思いました。漂泊の人である小泉八雲を調べ、深く役作りしてきた方なので、トキへの恋愛感情ではなく、「自分はここにいていいのか」という言葉を口にしたときに、ホロッと心が出たんだと思います」と、涙の理由を分析。
制作統括の橋爪國臣は「僕もあのシーンでトミーさんが泣くとは思っていなかったので、びっくりしました。でも、泣いてもっともだなと思ったし、今まで彷徨ってきた人が“そうじゃないんだ”と心に決めて、踏み出す一歩目がちゃんと見えた。そこがトキや錦織にも伝搬していってたんだと思うし、そんな素敵な3人のシーンになったと思います」と語った。
お互いの気持ちを確かめたトキとヘブン、そして錦織は、結婚の誓いをするべく出雲大社へ。






















