『ばけばけ』集大成の“1話ワンシーン” 異色のセリフ「だらくそが」を使用した撮影秘話も

髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
ついに夫婦となったトキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)。だが、勘右衛門(小日向文世)が「大船に乗ったつもりでな」とほほえむ松野家は借金を抱え、三之丞(板垣李光人)を社長だと偽る雨清水家の暮らしはトキ頼み。結婚披露パーティでも、その嘘を当たり前のように押し通す姿に、ヘブンは「みんな嘘つき」と不信感をあらわにする。
すると、第70話でトキはすべての嘘を認め、ヘブンに対して「お金のために結婚したと思われたくなかった」と本音を吐露。その言葉をきっかけに、それぞれにあったわだかまりが少しずつ解けていくことになる。
1話15分を丸々使ったこの場面について、演出の村橋直樹は「1話ワンシーンという、あまり例のない台本ならではの難しさがあった」と語り、濃密な撮影をこう振り返る。

「ワンシーンの中で、三之丞とタエ(北川景子)のこと、タエとフミ(池脇千鶴)のこと、そしてトキとヘブンのことまですべて解決しなければいけない。『これ、どうやって撮るんだよ』という気持ちでした(笑)。カメラの台数が足りないので一連では撮れないし、俳優さんの気持ちが切れないように、お芝居をどこで切ってどうつなぐかが本当に難しかったですね」(村橋)
基本的には頭から最後まで通して撮りたいタイプだという村橋だが、このシーンでは4~5のブロックに分けて撮影。しかし3つ目のブロックを撮る中で、まだリハーサルもしていない4つ目の芝居まで、思わずカメラを回し続けてしまったという。

「北川さんを撮っていたときに、『2回目にこの表情は出ないな』と思ったんです。(撮影後に)カットをかけたら、みんなから『もう、監督~』と言われましたけど、『ごめん、止められなかった』と(笑)。それくらい撮っている側も没入してしまう場面でしたし、俳優さんたちも本当に気持ちを乗せてくれたんだと思います」(村橋)
制作統括の橋爪國臣も「子役時代から14週まで、積み重ねてきた家族の話がありました。解決したようで解決しきれていない思いがずっと根底に流れていて、そこに一度、丸がつく。本当に大切なシーンだったと思います」と、これまでの集大成ともいえる名場面に言及。一方で、「編集はかなり大変だったはず」と語り、村橋も「あの場面だけで25分も撮れ高がありましたからね(笑)」と笑ってみせる。
さらに村橋は「僕が個人的に一番好きなのは、トキが初めてタエを『ママさん』と呼べたところ」と明かし、「タエの後ろで、三之丞が安心したような表情で泣いているんです」と、台本にはなかった板垣の表現に触れる。
「自分のことで精一杯だった男が、初めて姉と母という存在を客観的に見ることができた瞬間だったんだと思います。三之丞の中で、『これでよかったんだ』と腑に落ちた。板垣さんが積み重ねてきたものが、自然とああいう形で出たんだなと感じました」(村橋)





















