『ケナは韓国が嫌いで』のしんどさに救われた心 現実逃避したい人は『オフライン ラブ』も

主人公・ケナ(コ・アソン)は片道2時間かけて通勤、実家は貧しく、未来に希望がもてない日々を送っています。恋人はいて、優しく良い人ではあるけども、互いの家族には決定的な違いがある。“最悪”ではないかもしれないけど、満たされない、未来が見えない、どうしていいか分からない。この感覚、多くの人が味わったことがあるのではないでしょうか。特に格差社会が広がり続け、閉塞感で満たされている現代日本人は共感必至だと思います。

ケナはそんな日々を変えるべく、ニュージーランドへと移り住む。これまでにない友人と出会い、新しい自分にも出会う……とこのあらすじだけを見ると、ハートフルなヒューマンドラマと思わせてくれるのですが、決してそれだけではないのが本作のいいところ。もちろん、“海外移住フィーバー”シーンもあり、そこには『オフラインラブ』のような多幸感もあります。でも、ケナの人生が180度変わって生まれ変わるということはなく、たどり着くのは「自分は自分」であるというところに本作の醍醐味がありました。
海外移住をしたとしても、これまでの自分を捨てたとしても、やっぱり残るのは自分自身。でも、そんな自分をも受け入れることができたときに、人生っていいもんだなと思えるのかもしれません。「“幸せ”って言葉は過大評価されてる気がするんだよね」と劇中でケナが放ったこのセリフがめちゃくちゃ刺さりました。他人や社会が求めてくれる“幸せ”に踊らされず、自分の心に耳を傾ける。今をどう生きていくか悩んでいる人に向けて、まったく押し付けがましくない、フッと心を軽くしてくれるような一作でした。
■公開情報
『ケナは韓国が嫌いで』
ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム、イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョン
監督・脚本:チャン・ゴンジェ
配給:アニモプロデュース
2024年/韓国/韓国語・英語/107分/カラー/英題:Because I Hate Korea/日本語字幕:本田恵子
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