『おむすび』が映す“雇用環境の変化” 資格取得と朝ドラの関係を紐解く

現在放送中の『おむすび』(NHK総合)で、主人公の米田結(橋本環奈)は管理栄養士の資格を取得。結の夫である翔也(佐野勇斗)は理容師の修業をしながら試験勉強に励む。共働きで専門性を身に付けるために学ぶ姿には、2000年代以降の雇用環境の変化が反映されている。
朝ドラと働くことの関係は深い。女性の自立を描く朝ドラで、生計の糧を得ることはドラマの主軸を担ってきた。お仕事ドラマでもある朝ドラで、このところ主人公の資格取得が目立つ。2024年度前期の『虎に翼』は司法試験、2021年度前期の『おかえりモネ』は気象予報士に合格した。2022年度前期の『ちむどんどん』で主人公の暢子(黒島結菜)は沖縄料理店を開く。暢子が調理師免許を持っているかは不明だが、少なくとも食品衛生管理者の講習は受けているはずだ。
『虎に翼』寅子が挑む“高等試験司法科”とは? 現在の司法試験と異なる法律家への道のり
『虎に翼』(NHK総合)第6週で、寅子(伊藤沙莉)は高等試験司法科を受験する。法律家になるために試験に合格しなくてはならないのは…資格取得は主人公のステップアップの契機になってきた。管理栄養士の結は、憧れの西条(藤原紀香)の背中を追って大阪新淀川記念病院に転職した。『虎に翼』の寅子(伊藤沙莉)は司法試験(当時は高等試験司法科)に合格し、日本初の女性弁護士になる。『おかえりモネ』で、百音は気象情報会社でニュースの気象コーナーに関わる。『ちむどんどん』の暢子が沖縄料理店を開店したことは前述の通りだ。

100話を超えるドラマの前半で、資格への挑戦は突破すべき関門として主人公の前に立ちはだかる。『おむすび』で、結は栄養士取得の養成課程である専門学校で同級生と切磋琢磨した。『おかえりモネ』で主人公の永浦百音(清原果耶)は3回目の受験で気象予報士に合格するが、のちにパートナーとなる医師の菅波(坂口健太郎)に勉強を教えてもらう過程が描かれた。

『虎に翼』の司法試験は若干様相が異なる。資格取得そのものが女性の権利実現に直接結びついていて、明律大学女子部で学ぶ仲間との交流や志なかばで去っていく友の姿が描かれた。最終的に受験を断念する優三(仲野太賀)の決断は見ていてつらいものがあった。合格祝賀会での寅子の宣言は、その後の展開を予感させるものだった。
弁護士や裁判官のように資格が厳密に仕事と結びつく業種は例外として、資格を取得するのは夢をかなえるためで、やりたい仕事に就くために必要だからだ。平成不況の1990年代以降は「手に職」志向が増え、高校時代から簿記やIT系の資格取得が奨励されるようになった。誰もが何らかの資格を取得している状況で、スキルアップの意味も変わりつつある。人生を賭けた一大イベントから、当たり前のものとして物語のプロセスに組み込まれた。





















