『まどか26歳』原作者・水谷緑が感動した制作陣の“本気” 芳根京子は「応援したくなる」

『まどか26歳』原作者が感動した制作陣の本気

脚本家5名のチーム体制だから表現できた医師たちのリアル

ーー10年前に出版されたコミックエッセイということで、今の時代に合わせるために意識したポイントを教えてください。

松本:大きな違いは、第1話の冒頭から言及されている働き方改革の部分ですね。2024年から医師の仕事にも大きく影響しているので、研修医が9時から17時で勤務するという設定は原作にはない要素ですが、ドラマの軸の一つとして扱うようにしました。実際に研修医の方にお話を聞くと、早く帰れてラッキーという方もいれば、早く帰ることに違和感があるという方もいたので、そういったリアルな感覚をキャラクターの考えとして反映しています。新人だから定時で帰らされる、お客様扱いされるというのは、研修医に限らず会社員にもある話ですし、そういった部分から共感性を出せたらと思っていました。ただ、設定を現代にしても、原作のスピリッツだけは忘れないように心がけておりました。迷ったら、「原作に立ち戻る!」ということを監督や脚本家の方々とも合言葉に、脚本打ち合わせをしました。キービジュアルもまどかがラーメンを食べている瞬間を採用したり、セットや美術も明るい雰囲気を重視したりと、医療ドラマ独特の冷たさが出過ぎない優しい世界観を作ることを意識しています。医師も一人の人間という、原作の大切なメッセージが随所から伝わるように工夫しました。

ーー話の展開やキャラクターなど、ドラマオリジナルの部分も多いですよね。

松本:そうですね。原作がとにかく面白いので、塩村プロデューサーと監督、脚本家で、それぞれ面白いと感じたエピソードを出し合って、そのエピソードがより面白く見えるように前後の展開を作っています。原作の名セリフをどんなキャラクターに言わせたら映えるか、そのセリフを受けるのはどんな設定のキャラクターだとより響くかを考えて、ドラマオリジナルのキャラクターを作っていきました。研修医5人に関して、まどかと千冬(髙橋ひかる)、萌(小西桜子)は原作にもいるキャラクターですが、五十嵐(大西流星)と桃木(吉村界人)はドラマオリジナルのキャラクターです。女性研修医の話が中心ではありますが、女性のみで話を作っていくのは、現代性に欠けるかなと思い、男性目線が入れられるように五十嵐と桃木を追加しています。取材で出会った研修医の子たちもすごく面白くて、TikTokをやっている子だったり、医者一家に生まれてプレッシャーを感じながら頑張っている子だったり。取材で出会った方々の要素を入れることで、今の研修医のリアルも入れられるだろうと考えて、意見を出し合いながら五十嵐と桃木の設定を作っていきました。原作を生かす形でキャラクターを作ってからキャスティングをしていったので、俳優さんご本人の印象とキャラクターの印象がぴったりハマったキャスティングにできたなという自負があります。

水谷:実際に俳優の皆さんに挨拶させていただいたとき、鈴木伸之さんから菅野先生の不器用で真面目な雰囲気が見えたり、木村多江さんから手塚先生の優しさと穏やかさが見えたりと、役柄通りのイメージで驚きました。本当に素敵な方々に演じてもらえて、嬉しいです。

ーー『まどか26歳、研修医やってます!』は、脚本家5名のチーム体制で執筆されています。なぜこの体制での制作に至ったのでしょうか?

松本:今回は、各話でメインになる診療科が変わるので、それぞれのエピソードが薄くなってしまうのは絶対に避けたかったんです。原作通り、それぞれの診療科の医師をリスペクトした内容にするためには、取材に時間をかけなければならないと企画段階から感じていました。なので、複数人の脚本家に入っていただき、一人ひとりに各診療科の取材を担当してもらって、それに応じて話数とキャラクター作りも分担しようと考えたんです。キャラクターの数も多いですし、まどか以外の研修医がどこで研修しているのか、どんなドラマが動いているのかも考える必要があったので、それぞれの脚本家が各話の担当キャラクターの動きをチェックし、メインライターの前川洋一さんが全体を見つつ、進めていきました。週に1回の全体会議の他に、話の方向性やキャラクターがブレそうになったら集まっていたので、打ち合わせは1.5倍から2倍くらい時間がかかりましたね。作品が持つコメディ要素、シリアス要素、野球要素など、それぞれに強みがある脚本家に集まってもらったので、前川さんを中心にフラットに意見を言い合えていたのもよかったです。いい形でチーム体制がとれたと思います。脚本チームの皆さんには、スケジュールがタイトなこともあり、制作段階で苦労をかけました。振り返っても感謝しかありません。

ーー水谷さん自身、実際に進んでいく制作を間近で見ていかがでしたか?

水谷:脚本家チームの話もそうですけど、各分野のプロが集まって、短時間でドラマを作り上げていく過程には、本当に感動しました。私自身、取材をするのは大好きだけど、キャラクターを出すのが苦手という課題がありまして。セリフに合わせてキャラクターを作ったり、少しの仕草から性格を表現したりと、「キャラクターってこうやって見せるのか!」と、プロの仕事を間近で見たことが大きな学びになりました。最近は、現実に即した少し暗めのリアルな話を描くことが多かったので、芳根さん演じるまどかの前向きな姿を見て、明るい性格の主人公が活躍する作品っていいなと改めて思いました。エンタメ寄りの元気を与えられる作品も描いていきたいです。

ーー今後の見どころを教えてください。

松本:原作は、実際に起きたエピソードを交えているからこそ、予定調和にならない面白さがあると思っています。そういった原作の雰囲気を尊重して、コメディ、シリアス、ラブのどれにも寄らない面白さが各話で展開されていきます。一人の働く女性であるまどかの人生を描きつつ、現代の医療課題も交えて展開していくので、さまざまな観点から楽しんでいただきたいです。

水谷:まどかのパワフルな研修医生活を通して、誰かの背中を押せたらいいなと思って描いた作品です。芳根さんに演じてもらったことで、その要素がより強まったと感じています。ドラマを観て、まどかも頑張っているから私も頑張ろうと、明日への活力に繋げていただけたら嬉しいです。

『まどか26歳、研修医やってます!』の画像

火曜ドラマ「まどか26歳、研修医やってます!」

“お医者さんだって、幸せになりたい!”と願う主人公の研修医が、変わりゆく医療現場で戸惑いながらも、ベテラン医師たちの試練に立ち向かい、同期の仲間たちと励まし合って、医師として女子として、人生と向き合う姿を描く。

■放送情報
火曜ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:芳根京子、鈴木伸之、髙橋ひかる、大西流星、吉村界人、小西桜子、渡邊圭祐、堀田茜、佐野弘樹、岩男海史、小松利昌、信川清順、板倉俊之(インパルス)、森カンナ、赤堀雅秋、溝端淳平、佐藤隆太、木村多江、奥田瑛二
声の出演:大塚明夫、大谷育江
原作:水谷緑『まどか26歳、研修医やってます!』『あたふた研修医やってます。』『離島で研修医やってきました。』(KADOKAWA刊)
脚本:前川洋一、船橋勧、松井香奈、村野玲子、原野吉弘
音楽:伊賀拓郎
主題歌:星野源「Eureka」(スピードスターレコーズ)
演出:井村太一、山本剛義、大内舞子
プロデュース:塩村香里、松本桂子
編成:武田梓
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©Midori Mizutani/KADOKAWA
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/madoka26_tbs/
公式X(旧Twitter):@madoka26_tbs
公式Instagram:madoka26_tbs
公式TikTok:@madoka26_tbs

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