『トラウマコード』チュ・ジフンが“背中”で魅せる説得力 人間ドラマの切れ味の良さ

また本作は、ガンヒョクを支える部下たちとの関係が物語に深みを加えている。肛門外科の若手医師ジェウォン(チュ・ヨンウ)は、ガンヒョクが赴任した日、当直として勤務していた。急患に対処しなければならず、迷いを見せていると、ガンヒョクが現れて処置をし、患者は一命を取り留める。その後、ジェウォンはガンヒョクの腕に惚れ、肛門外科から重症外傷外科に移ることを決意する。

ガンヒョクがジェウォンのことを“肛門”と呼んでいるのもじわじわと笑いを誘い、素直で純粋なジェウォンと彼の腕を見込んだガンヒョクのテンポの良い掛け合いもクセになる。ジェウォンは周りをよく見ていて、医者同士の関係や派閥もよく理解しているが、その上で自分の気持ちに正直になれる人。情に脆く、純粋さもある。ガンヒョクに対し、時には主人を崇拝するペットのようについて歩き、時には反抗期の息子のような態度を見せるが、ガンヒョクは若手の成長だと大目に見る。2人のやりとりが笑いや感動を与えてくれるのだ。
さらに、重症外傷外科に勤めて5年目の看護師ジャンミ(ハヨン)もチームで中心的な役割を果たす。ガンヒョクとの出会い方が最悪だったジャンミは“暴力団”と呼ばれるようになるが、おかしいことにはおかしいと立ち向かう強さを持つ彼女には、あながち間違っていないニックネームかもしれない。ガンヒョクを説得できるのは彼女だけだ。

ジャンミはガンヒョク不在で焦るジェウォンのことも、どっしりと構えて支える。「大丈夫」など無責任な言葉は使わず、ムカついている時は屋上の換気扇に向かって叫ぶのが気持ち良いと、ただ教えてくれる。看護師としての腕やガッツも一人前で、彼女がいれば現場はどこか安心感が生まれる。“暴力団”でありながら、聖母のような存在だ。
劇中のキャラクターと俳優自身、“若手”という立場が重なっているからこそ、彼らが生み出す空気をよりリアルに感じることができるのだろう。パズルのピースがかっちりハマって新・重症外傷外科のチームが誕生したように、人気俳優とこれから道を切り拓く若手俳優によるバランスが信頼と安心を与えてくれる。
他にも、麻酔科の中で唯一と言える、医者としての強い意志を持っているギョンウォン(チョン・ジェグァン)や、最初はガンヒョクを目の敵にしていたものの、彼の腕を信じるようになる外科部長のユリム(ユン・ギョンホ)など、多様で有能な人々に囲まれている重症外傷外科チーム。医療への関心を真摯に訴えるガンヒョクが投げかける言葉の一つ一つは、視聴者の胸にも深く刺さるものがある。

命を救う現場でありながら、命よりもお金や地位を大切にしている人間たちにメスを入れる『トラウマコード』。深刻な医療シーンもあれば、仲間たちの掛け合いはポップに描かれており、緩急があって飽きる暇もない作品だ。シーズン2・3と続きがあることを願って、続報を待ちたい。
■配信情報
Netflixシリーズ『トラウマコード』
Netflixにて独占配信中
出演:チュ・ジフン、チュ・ヨンウ、ハヨン、ユン・ギョンホ、チョン・ジェグァン
制作:イ・ドヨン、チェ・テカン
Netflix © 2025





















