内野聖陽×大森寿美男が語る、表現者としての“矜持” 『ゴールドサンセット』への思いを語る
内野聖陽「技術では人の心は動かない」
――大森監督は内野さんの不安をどのように受け止めていらっしゃったのでしょうか？ 脚本と俳優としては何度もご一緒していますが、監督と俳優としては本作が初めてですよね。
大森：内野さんは俳優として僕は2つの面を持っている方だと思っていました。一つは演じるというパフォーマーの側面。そしてもう一つは役を通して作品を作るクリエイターの面。脚本だけを書いていたときは、クリエイター的な面は監督さんとやっていたと思うのですが、今回はその部分も僕は経験できました。脚本を書いて作品を構築するということにプラスして、内野さんが作り出す阿久津という人物を通じてさらに作品を理解できるのが、すごく面白かったです。
内野：僕はあまり自分がクリエイターという視点で役と向き合っているという意識はないんですよね。役者として最大限のことはやっているつもりですが。
大森：でも琴音役の毎田さんとの空間の作り方とかは、僕自身も内野さんにすごく頼り切っていました。僕が言うよりも、内野さんが（毎田）暖乃ちゃんに対して出してくださる雰囲気が大きく導いてくれていたと感じていたんです。
――内野さんは、監督・大森寿美男というのはどんな存在でしたか？
内野：大森監督が面白かったのは、演出するときの言葉が、哲学的！……というと硬すぎますが、とても抽象的なんです。僕にはそれがすごく嬉しかった。表現する側の選択肢が広がって面白い。特にリア王の稽古のシーンとか、大森さんの役への解釈が深いので、自分にとっても目からうろこみたいなことがたくさんありました。
――劇中に登場する市民劇団「トーラスシアター」は55歳以上という入団資格がありました。お2人はこの年齢になったからこそ感じる表現方法の進化などはありますか？
内野：あるのでしょうけれど、僕はどちらかというと、この年齢になってきたからこそ注意しなければいけないという思いが強くなっています。
――というのは？
内野：それなりにキャリアも積んできて、引き出しも多くなると、以前似たような役をやった経験をもとに、容易に演じてしまいかねないんですよね。型とか技術みたいなものが、自分のなかでノイズだなと感じることが多くなってきています。技術では人の心は動かない。だからこそ、若いころのハングリーさや、がむしゃらな気持ちというのは、今だからこそより強く持たないと危険だなと感じています。
――手練れてしまうとダメということなんですね。
内野：そうそう。しっかり練り上げ、創り上げて行くんだ、というエネルギーを持っていかなと、といいものが作れない。しかも若いころと違って、周囲もあまり言ってくれなくなるんですよね。だからこそ自分に厳しくしないといけないなと思うようになってきました。
――大森監督はいかがですか？
大森：僕も同じようなことですが、やっぱり若いころの純粋な気持ちに戻っていくような感じがしています。いまいろいろな邪念が消えてきている。シニア劇団だって、役者を目指すというよりも、いま自分がやりたいことはどんなことなんだろう……ということを追求する場なのかなと。そんなことを感じていますね。
内野：大森さんはそうなんですね。僕は作家としてのお付き合いは長いのですが、監督として今回初めてご一緒しました。事務所で最初に打ち合わせをしたときから、大森さんの目があまりにもキラキラしていて、ちょっと引いちゃったぐらい（笑）。子供のような目をして作品のことを語っている姿を見て、いまおっしゃっていたことがよくわかりました（笑）。
――内野さんもそんな大森監督の純粋な思いに感化されたんですね。
内野：いや目を背けたくなりました。それぐらい純真な思いを感じました。自分が汚れているように感じるぐらいでしたよ（笑）。
■放送情報
『連続ドラマＷ ゴールドサンセット』（全6話）
WOWOWにて、2月23日（日・祝）スタート 毎週日曜22:00〜放送・配信
※第1話無料放送
配信ページ：https://www.wowow.co.jp/drama/original/goldsunset/
出演：内野聖陽、小林聡美、中島裕翔、三浦透子、毎田暖乃、和久井映見、坂井真紀、六平直政、安藤玉恵、有薗芳記、津嘉山正種、益岡徹、風吹ジュン
原作：白尾悠『ゴールドサンセット』（小学館刊）
脚本：大森寿美男
監督：大森寿美男、清水勇気
音楽：梁邦彦
企画・プロデュース：西憲彦（WOWOW）、鈴木光（光和インターナショナル）
プロデューサー：小髙史織、榊田茂樹
制作プロダクション：光和インターナショナル
製作著作：WOWOW
©白尾悠／小学館 ©2024 WOWOW INC.
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＜応募締切＞
2月28日（金）
