安田顕、『べらぼう』平賀源内役は新たな代表作の予感 2つの『大奥』と比較する楽しさも

NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1回で、舞台や映画、ドラマと幅広く活躍する安田顕が「厠の男」として登場した。「厠の男」とは第1回のオープニングクレジットに記載されていた役名だが、出演者発表などの情報ですでに知られている通り、安田が演じるのは江戸時代に活躍したマルチクリエーター・平賀源内である。
平賀源内は本草学者、地質学者、蘭学者、小説家、俳人、発明家、コピーライターと数え切れないほどの肩書きを持っている。そんな多才とも奇才とも称される平賀源内を、コミカルな演技から“静”の芝居、はたまた悪役としてゾッとするような演技を見せたり、視聴者や観客を圧倒する怪演までやってのける安田が演じるのだからワクワクしないはずがない。
第1回での安田の登場シーンは短いが、ペラペラと早口でテンポよく話す姿に惹きつけられる。安田はその特徴的な声色で「お前さん、それはクソにご無礼ってもんよ」「あいつらは、屁」「何の役にも立ちゃしねえ、へへへのへっぴり野郎よ」と小気味よく台詞を発した。その声色だけで期待感が高まるが、安田演じる「厠の男」が現れた瞬間には「よっ、待ってました!」と声をあげたくなった。
「厠の男」は主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)の言葉に耳を傾けると、「じゃあ、いっそ、田沼様のところに行ってみるってのはどうだい?」「あん人は案外と町場のもんの話も聞いてくれるよ」と言って、ニカッと笑う。誰とも知らぬ相手に親しげな人が良いおじさんに感じられたのも束の間、「厠の男」は唐突に“田沼様肝煎りの墨”を売り込んでくる。
早口な台詞の言い回し、矢継ぎ早に変わっていく話題、それに安田のコロコロ変わる表情があいまって、興味関心の赴くまま学び、研究し、創作していく平賀源内の人物像がありありと感じられる場面だった。蔦重はまだ目の前の男が平賀源内だと知らない。しかし視聴者の目には、蔦重と田沼意次(渡辺謙)をつないだ平賀源内が今後も蔦重に多大な影響を与えることが十二分にうかがえたはずだ。
安田顕の俳優としての底知れなさ 『大奥』田沼意次の邪悪さに背筋がゾクッとする!
愛のない相手との政略結婚のはずだったのに……。家治(亀梨和也)への淡い想いを側室がいるということへの嫉妬とともに自覚した倫子(小…
なお、安田は2024年放送の『大奥』(フジテレビ系)で田沼意次を熱演。安田演じる田沼は自身の出世のためなら人を脅すことも騙すことも厭わないような人物として描かれた。10代将軍・家治(亀梨和也)の家臣でありながら、家治を陥れようと目論んだり、脅したりする姿は、亀梨が繊細な演技を見せたこともあってか、とにかく恐ろしく不気味に映る。しかし最終話で、松平定信(宮舘涼太)の策略によって老中職を罷免された田沼が江戸城に火を放ち、自害する最期は切なさも感じられた。またSNSでは、最終話で安田が見せた迫真の演技が高い評判を呼んだ。