横浜流星、“新しい大河”『べらぼう』で届ける挑戦し続ける姿勢 「皆さんに愛される蔦重を」

「ちゃんと発信することが大事」

ーー横浜さんは、舞台『もののふ白き虎―幕末、「誠」に憧れ、白虎と呼ばれた若者達―』(2015年)で白虎隊士の役を演じられたこともあります。『もののふ白き虎』は幕末で、本作は江戸中期ではありますが、“江戸時代”への思いは?

横浜:蔦重が生きていた江戸時代がどういう時代かと言われれば、“いい時代”だと思います。今は情報が多い中で自分を持てずに流されてしまうような人も多いと思うんですけど、蔦重の時代は戦もないですし、今のように情報が錯乱してない。もちろん理不尽なことはありますし、不自由ではあるけれども、だからこそ、自分をしっかり持っていて、人と人がしっかりと交流をしている。その点は演じる上でも大事にしたいと思いました。

ーー江戸時代の強烈な格差社会の中で、下から上がっていくというところが、今回の蔦重の役割のひとつとも考えられます。横浜さんはその格差社会というのをどのように捉え、何が貧しさから上っていく原動力になると思いますか?

横浜:格差はどの時代にもあり、どうしたらなくなるのか正直、自分でもわからないんですけど、ただそこで「そうだよな……」と諦めるのではなくて、その中でももがいて動くことが大事なのかなと思ってます。僕も年を重ねてきて、心の中で思うことがたくさんあります。でもただ、それを飲み込むんじゃなくて、ちゃんと発信することが大事だなと。結果的に何も変わらないかもしれないけど、それはやってみなきゃ分からない。なので、蔦重がしがらみにとらわれずに立ち向かう姿には背中を押されています。

ーー蔦重は“メディア王”になりますが、前半は全然“メディア王”になれず、ことごとく出版界に参入するのを妨害されるという展開になっています。中でも風間俊介さんや片岡愛之助さんらが演じる地本問屋には知恵を使って立ち向かっていっていますが、地本問屋の人たちとのやりとりで共感するところや印象的なエピソードはありますか?

横浜:僕は、蔦重として生きているときは自分を排除してますけど、「うまくいかねえな」という思いはすごく分かる部分があります。蔦重は「うまくいかないなら次」と思えるような発想があるので、その点は共感というよりも、やはり客観的に見てすごい人物だなと。そして、蔦重は周囲の人物にも恵まれているんです。周りの人からヒントを得て、そこからひらめいていくのでちゃんとすくい取るというか。周りをちゃんと見てるおかげ、周りの人のおかげでそういう企画力が生まれるのかな、と思ってます。

ーー1年にわたる長い撮影に臨まれるにあたって、具体的に準備されたことはありますか?

横浜:『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014年/テレビ朝日系)の撮影を1年半ぐらいやっていて、そこで芝居の楽しさを知り、「この世界で生きていこう」と決めたので、こうして10年経った今、また1年半同じ役を演じることに、何か運命を感じています。役作りのために題材になる作品を観ましたし、実際に蔦重が生まれ育った場所に行き、空気を感じたり、資料を見たり、専門家の先生に会って話を聞いたり。あと阿部寛さんが映画『HOKUSAI』(2021年)で蔦重を演じられていたので、いろいろと話を聞きました。準備が多い作品をやっていると、どうしても足りないと思うことが多いのですが、一番大切なのは森下先生の作った世界で蔦重として生きること。江戸時代を生きることもそうですし、1年間作品と蔦重と向き合うことは挑戦だなと思います。でも役者としてとても贅沢で幸せなことだと思うので、しっかりとそこは大事にしながらも、皆さんに愛される蔦重を作っていけたらいいなと思っています。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、1月5日(日)スタート
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
※初回15分拡大版
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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