2024年の年間ベスト企画
麦倉正樹の「2024年 年間ベストドラマTOP10」 「量」よりも「質」を願いたい地上波ドラマ
6位以下の5作に関しては、但し書き付きの評価というのが、実は正直なところだったりする。『アンメット』の杉咲花の芝居には毎回目を見張るところがあったし、昨年末に公開された映画『市子』から早いタイミングでの再共演となった若葉竜也もすごく良かったし、静謐な演出にも好感を持ったけれど、肝心の「物語」部分に没頭できたかというと、個人的には必ずしもそうではなかった。『海に眠るダイヤモンド』も、日曜劇場らしいスケール感と「軍艦島=端島」の再現には目を見張るものがあったけれど、「過去」と「現在」の関連性の引っ張り方がいささかもどかしく、ことあるごとにドラマチックな劇伴ほどにはハマり込んで観ることはできなかった。宮藤官九郎脚本による『不適切にもほどがある!』は、テーマと狙いはすごく面白いと思ったけれど、それを全方位的に納得させることの難しさ、しかもそれをコメディとして描くことの難しさを改めて感じさせられた。毎回書き下ろしのミュージカルシーンがあるなど、手間暇を掛けていることは間違いなかったし、映画や配信も含めて、今年数多く観たクドカン作品では、本作がいちばん面白かったような気がする。
『海のはじまり』の脚本を担当した生方美久と『滅相も無い』の脚本・監督を担当した加藤拓也に関しては、今回の作品が必ずしもベストとは思わなかったけれど、今後の期待も込めて。2021年の1位に選んだ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)の脚本家・坂元裕二、そして2022年の2位に選んだ『エルピス』の監督・大根仁が相次いでNetflixと長期契約を結ぶなど、地上波から配信へと軸足を移すクリエイターの動きが目立つ昨今、若い脚本家たちの活躍には、大いに期待したいところなので。とはいえ、今のテレビ界に、果たしてその余地は残されているのだろうか。いずれにせよ、深夜も含めて地上波で放送されるドラマの数が、あまりにも多過ぎるのではないか――できれば、「量」よりも「質」で勝負してもらいたいところなのだけど。そう感じているのは、恐らく自分だけではないだろう。
■配信情報
Netflixシリーズ『地面師たち』
Netflixにて独占配信中
監督・脚本:大根仁
出演:綾野剛、豊川悦司、北村一輝、小池栄子、ピエール瀧、染谷将太、松岡依都美、吉村界人、アントニー、松尾諭、駿河太郎、マキタスポーツ、池田エライザ、リリー・フランキー、山本耕史
原作:新庄耕『地面師たち』(集英社文庫刊)
音楽:石野卓球
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一
プロデューサー:吉田憲一、三宅はるえ
製作:Netflix
制作プロダクション:日活、ブースタープロジェクト
©新庄耕/集英社