『わたしの宝物』松本若菜×田中圭×深澤辰哉の配役の妙 美羽、宏樹、冬月の幸せを願って

『わたしの宝物』松本若菜らの配役の妙

 また、松本若菜、田中圭、深澤辰哉の3人が本作に揃ったのも必然だと言える。松本は明るく元気なイメージがあるが、優しさ故の悩みを抱える大人な表情が印象的だ。田中は類まれなる演技力はもちろんのこと、夫/父親役を担った時こそ、優しさと説得力が共存する唯一無二の存在感を見せている。深澤は『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)で体現したような控えめな温かさを持っている。全員の根底には思いやりが感じられ、それが役そのものにもリンクしているからだ。

 本作は情景やストーリーがコロコロと移り変わるのではなく、それぞれのキャラクターの内面がじっくりと描かれている。だからこそ、俳優たちの演技力が光る。本心を全て打ち明けることができないからこそ、頭の中で考えて、絞り出して言葉を発し、その気持ちが表情にも滲み出ているのだ。(もちろん状況の重大さは違うけれど)誰かに叱られている時や誰かとけんかした時に感じるような、「今すぐこの場から抜け出したい」という空気感が漂っていて、観ている自分まで苦しくなってくる。これは俳優全員の力で作られているものなのだろう。もうすでに演技の実力は知れ渡っている3人だが、本作での演技には、表情や言葉の一つ一つに耳を澄ませ、目をくぎ付けにするパワーがあり、俳優としてさらなる段階に上がったその瞬間を目の当たりにしているような感覚だった。

 最終回を前に、宏樹には「なぜ美羽は栞の父親を頑なに言わなかったのか?」、そして冬月には「子供の父親は誰なのか?」という問いがそれぞれに明かされた。一方で、宏樹が最善として取った行動によって再会した美羽と冬月の行く末はどうなるのか、という重要な疑問が残された。

 動物園という幸せ溢れる雰囲気の中で、栞を前に2人はどのような会話を交わすのか。全員が自分なりのやり方で、“完全なる幸せ”ではなくても、納得のいく豊かな人生を掴むことを願いたい。

■放送情報
木曜劇場『わたしの宝物』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:松本若菜、田中圭、深澤辰哉、さとうほなみ、恒松祐里、多岐川裕美、北村一輝
脚本:市川貴幸
主題歌:野田愛実「明日」(avex trax)
演出:三橋利行(FILM)
プロデュース:三竿玲子
制作・著作:フジテレビ
©フジテレビ
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