北村一輝が醸し出す、唯一無二の“二面性” 『わたしの宝物』と『地面師たち』のギャップ

北村一輝が醸し出す、唯一無二の“二面性”

 美羽(松本若菜)と宏樹(田中圭)の離婚直前に、さらなる展開が襲い掛かってきた『わたしの宝物』(フジテレビ系)。思わず息をのむ瞬間が多いため、宏樹と同じように、北村一輝演じる喫茶店の店主・忠行に救われた人も多いだろう。

『わたしの宝物』©︎フジテレビ

 仕事のストレスで壊れかけていた宏樹をコーヒーに誘い、そのうち宏樹の話を聞く、良き理解者となった忠行。宏樹のような極限状態ではなくても、日々忙しく生きている中で忘れがちなほっと一息つくこと、息継ぎをすること、その大切さを思い出させてくれた。

 忠行にはどこか心の内をさらけ出したくなるような、フレンドリーさと包容力を感じられる。彼が今までどんな人生を生きてきたのかわからないが、経験値が高く、適切な助言をくれそうな“親戚のおっちゃん”的な距離感だ。

『わたしの宝物』©︎フジテレビ

 それは北村一輝自身が醸し出している雰囲気でもあるのかもしれない。TVerで配信されているTVerオリジナル番組『おっちゃんキッチン』では、北村演じる“おっちゃん”のお店に、愚痴をため込んだ女性たちがやってくる。おっちゃんは無口でほとんど話すことはないが、その佇まいとおいしい料理・お酒が相まって、お客さんたちはペラペラとため込んでいたものを吐き出して、安らかな顔をして帰っていく。そんな場所が近所にあったらいいな、なんて考えてしまうほど、おまかせ料理も居心地も素敵なのだ。

 また、ドラマ『366日』(フジテレビ系)では、明日香(広瀬アリス)と念願の交際をスタートさせた直後、事故に遭って記憶を失ってしまう遥斗(眞栄田郷敦)の父親を演じた北村。お好み焼き屋「てるちゃん」を営み、戸田菜穂演じる妻との仲睦まじい姿も微笑ましい。息子が記憶を失ってしまい自分も辛いにもかかわらず、明日香たちのことも気にかける父親としての存在感を見せた。友達のお父さんのような、子どもたちにも分け隔てなく接してくれる様子にはどこか懐かしさも感じるほどだった。

 そんな包容力のある姿が印象的な一方で、Netflixドラマ『地面師たち』では偽の土地の売買契約を結んでお金を得る詐欺師集団“地面師”の一人、情報屋の竹下として、薬と金に溺れる狂気的な姿を体現。

『地面師たち』©新庄耕/集英社

 自分の仕事はしっかりこなしていたが、だんだんと態度が荒っぽくなっていき、その過程で出るセリフ「ルイ・ヴィトン!」はアドリブだったことも話題になった。徐々に欲と快楽に浸食されていく人間を全身で表現し、キーパーソンとして豊川悦司、綾野剛に続き、このドラマの世界に引き入れる役割を果たした。

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