『モンスター』“杉浦”ジェシーの熱意が心を動かす 法律ドラマとラップの相性
「話したくないんですか。それとも話せないんですか?」
言えないことをどう相手に伝えるか。『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)第10話では、言葉に込められた“思い”が道を開いた(以下、ネタバレあり)。
闇バイト組織の指示役キング(丸藤慶治)の出身地は群馬だった。粒来(古田新太)は群馬の案件に関わったことで家を出たのではないかと亮子(趣里)は考えた。その折、群馬出身のさくら(前田敦子)が事務所を訪ねてくる。さくらは地元企業を訴えたいと話した。
第10話の舞台は群馬である。自然豊かな山遥村に産廃処理場ができてから、住民の健康状態は悪化し、草木が枯れるなど環境への影響が懸念された。公害・環境訴訟はハードルが高い。被害者が原告になるが、裁判が長期化する事例もある。エビデンスを集めて被害を立証しようにも、肝心のデータは相手方企業が秘匿するという情報格差もある。
亮子は住人から情報収集を試みるが、健康被害や処理場のサカミクリーンについて聞かれたとたん、口をつぐんでしまう。彼らは聞かなかったことにしてやりすごそうとしていた。さくらの母親(宮地雅子)によると、建設計画が発表された当初、住民の大半が反対したが、働き口が増え、村に補助金が下りると聞いて賛成に回る村人が増えた。さらに建設されたあかつきには、1世帯当たり100万円の謝礼が払われることになり、ほとんどの住民が賛成した。そんな中、一人反対し続けたのが内海泰造(眼鏡太郎)だった。泰造の反対によって、いったん計画は白紙になった。しかし、直後に泰造が自殺したことで、処理場は建設され現在に至る。
第10話でところどころに挟まれる「反社」の二文字。サカミクリーンは反社のフロント企業で、キングは元従業員。粒来はサカミクリーンの顧問弁護士だった。粒来は、建設反対派の代理人を務めていたが、その後、弁護士登録を取り消し、最近になって再登録した経緯がある。犯罪組織と泰造の不審死、暗躍する代理人。暗い影が村人たちの心理面に影響しているようで、その事実が現実から目をそらさせていた。健康被害の話はご法度で、口をつぐんで生きていく。それが自分たちのためになると信じた。