『モアナと伝説の海2』が“続編もの”の壁を打破できた理由 “ポリコレ疲れ”からの解放
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、フラダンスを1年半習っていた経験があるちょっぴりハワイアンな佐藤が『モアナと伝説の海2』をプッシュします。
『モアナと伝説の海2』
ディズニー映画は、近年特に“続編もの”のリリースラッシュが続いている。2024年6月に公開された『インサイド・ヘッド2』をはじめ、2025年には『ズートピア2』の公開も控えている。正直に言ってしまうと、私は続編ものはあまり好きではない。これはディズニーに限った話ではなく、往々にして初期作に比べて魅力が薄れると感じることが多いからだ。だが、『モアナと伝説の海2』は私が抱えていた“続編もの”に対する偏見を完全に打破した。前作『モアナと伝説の海』から7年が経過したが、本作はその長い年月を感じさせないほど、前作の魅力をしっかりと継承しつつ、新たな物語とキャラクターの成長を加えている。ポリネシアにある島々がモデルとなっており、実際に存在する神話をベースにしている本シリーズだが、続編では神話学の視点で物語により深みが増している。
前作から3年後を舞台にした本作では、妹・シメアの誕生や数々の冒険を経て精神的に成熟したモアナの姿が描かれている。彼女が知ることになる「かつて人々は海でつながっていた」という伝説は、単なる物語の背景にとどまらず、作品の中心的なテーマとなっている。この伝説が象徴するのは、ポリネシア諸島を含む南太平洋の島々が、海を越えて行き来しながら文化圏を形成してきた事実であり、モアナの行動もまた、自己満足にとどまらない使命に向けた内面的な成長の象徴となっている。
そんな物語の中心にあるのは、モアナのリーダーシップが試される冒険である。本作では天才肌の船大工のロト、カナヅチで植物と土を愛する農夫のケレ、マウイのファンで力持ちのモニといった島の新たな仲間たちと冒険の旅に出ることになる。はじめ、“個”の強い彼らと意見が食い違い、苦労するモアナだが、異なる価値観との摩擦から個性を最大限に活かす方法を模索していく。これが、他の島に住んでいるかもしれない人々との関わり方を学ぶ前準備として描かれているのが面白い。