『光る君へ』藤原隆家役は竜星涼の新たな代表作に “問題児”から“頼れるリーダー”への軌跡
そして隆家が元来、家族思いであり、人とのつながりを大切に思う人物だと分かったのが第35回。隆家は伊周が道長を襲撃するのを阻止した。自らの行動によって兄の行く末を阻んだことを反省し、兄がこれ以上罪を重ねないようにと願ってのことだった。隆家がふいに見せた涙に、心の底から兄を心配する隆家の思いが詰まっていた。
どんなに憎まれようと、兄と向き合い続けた隆家。おそらく、そんな彼の実直さが武者である平為賢らと向き合った際、彼らに伝わったのだろう。まひろを宋の茶でもてなす場面で、隆家は「ここには仲間がおる」と話すと、為賢に顔を向けて「為賢は武者だが、信じるに足る仲間だ」と口にした。為賢を見る隆家のまなざしはまっすぐで、本心から仲間として接していることが伝わってくる。隆家について語る為賢の誠実な口ぶりもあいまって、2人が身分を超えた信頼関係を築き上げたことが感じ取れた。
まひろのために開いた宴の席で、まひろと隆家はこんな言葉を交わす。
「隆家様は明るく頼もしきお仲間に囲まれておられるのですね」
「ああ。ここは気取らずにいられる場所だ」
気取らずにいられる場所で、藤原友近(出合正幸)や藤原助高(松田賢二)、為賢と舞う隆家は心の底から楽しそうに見えた。第16回で伊周から「お前も舞え」と言われた時に見せた挑発的な顔や退屈そうな顔とは別物だ。
竜星は公式サイトで公開されているキャストインタビュー動画「君かたり」で、「自分たちの手を汚してまで、自ら行動して何かをするっていうことはしてこなかった人たちがやっぱり周りには多いので、身を粉にして泥にまみれながら戦うといいますか、働くといいますかね、そういう人たちにやっぱり出会えなかったし、きっと彼は出会いたかったんだろうし、そういう部分では大宰府にいる隆家っていうのは本来こうなりたかった自分の像に近いんじゃないかなというのは思いますね」と語っている。
隆家は身を粉にして戦う人たちとの出会いによって、“本来こうなりたかった自分”を手に入れた。彼は自らも先陣を切って異国の海賊との戦いに臨む。次回、武者たちとともに異国の海賊を食い止める隆家の姿は、よりいっそう魅力的に映るはずだ。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK