『おむすび』が描く理想の「たすけあい」=「支えあい」 悪意ではない善意ほど難しい

『おむすび』が描く理想の「たすけあい」の先

 結の行動を後押ししたのは愛子(麻生久美子)である。「話せば伝わる」と前向き(性善説的?)だ。彼女も米田家の一員、他人のために一肌脱ぐことを厭わない。歩と聖人が落ち込んでいると、お好み焼きパーティーを緊急開催し、結の同級生・佳純(平祐奈)が家族のことで悩んでいると知るなり、佳純の母に会いに行き、悩みを一気に解決する。愛子だけが、他者に拒絶されず、いい方向へ問題を転がす器用な人なのは、他家から嫁いできて米田家の血が流れてはいないからであろうか。ただSNSをざっと見ると視聴者のなかには愛子のマイペース過ぎる言動が受け付け難い人もいるようだ。それに、困ったことを彼女が解決してしまう万能キャラのような位置づけになっているようなところもある。それはさておき、愛子の助言に背中を押されたのは結だけではない。

 聖人は、孝雄に対するアプローチを変更し、靴の修理を頼むことで、孝雄に生きがいを思い出してもらおうと試みる。靴屋が開店休業状態であることが気になっているのだ。歩は墓参りをやめない宣言。自分の真紀への思いはそれだけ強い。

 まあ、正直、聖人と歩とふたり体制でこられると、孝雄は追い詰められた気持ちになってしんどいのではないかとも思うのだが……。

 とかく「たすけあい」は難しいものである。たすけていることで自己満足に浸ることなく、相手に何をすればいいか適切な「たすけ」を見極めないといけない。そうでないと、ともすれば逆に相手を傷つけてしまうことになる。

 真のたすけあいを未だ知らない米田家の人たちが、悩みながら、理想の「たすけあい」=「支えあい」を探っていく姿を見て、私も歳末、たすけあいの達人になりたいと思う。

 聖人が、自暴自棄になっている孝雄の心が落ち着くことを押しつけることなく、「いつまでも待つ」という意味で靴の修理を頼んだことは印象的だ。聖人は「たすけあい」の秘訣をすこし学んだのだろう。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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