秋ドラマは掛け持ち俳優の“ギャップ”がすごい 柿澤勇人、西垣匠らの巧みな演じ分け

秋ドラマ掛け持ち俳優は“ギャップ”がすごい

 作品が変われば、当然、俳優の見え方も大きく変わってくる。今期もまたいくつかのドラマを掛け持ちしている俳優たちが見せる“ギャップ”に魅了されている視聴者も多いのではないだろうか。本稿では今期のドラマを掛け持ち中の俳優たちを紹介する。

柿澤勇人 

『全領域異常解決室』©フジテレビ

 『全領域異常解決室』(フジテレビ系)と『ライオンの隠れ家』(TBS系)に出演しているのが、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で悲劇の将軍・源実朝での演技が記憶に新しい柿澤勇人だ。

 『全領域異常解決室』では、内閣官房国家安全担当審議官の直毘吉道を演じ、表立ってはいないが、かなり重要な役を担っている。直毘はヒルコが引き起こした様々な事件をビッグデータを解析して、その情報を内閣府直轄の世界最古の捜査機関である全領域異常解決室(通称・全決)の宇喜之民生(小日向文世)に相談を持ちかけるという、内閣と全決の橋渡し役。霞が関の官僚という優秀な立ち位置なだけに、本作ではいわゆるお役所的な融通の効かない人物として描かれており、その表情はいつも険しい。また、宇喜之との会話からは神への強い関心を匂わせており、第7話にしてヒルコではないかという疑いも持たれている。

『ライオンの隠れ家』©︎TBS

 一方、『ライオンの隠れ家』で柿澤が演じているのは、山梨で起きた“ある事件”を捜査する刑事・高田快児。刑事という堅苦しい役ではあるのだが、『全領域異常解決室』での直毘とは異なり、人間味のある一面も見せている。特に第4話では週刊真相編集部の記者・工藤楓(桜井ユキ)に弱みを握られて、あたふたする場面もあり、どこか親近感がある役どころだ。

 実直な役どころが似合う俳優という印象もあるが、今期は新たな一面を楽しめそうだ。

安井順平

『わたしの宝物』©フジテレビ

 今期だけで3作を掛け持ちしているのが安井順平だ。2007年より俳優として活動を始めた安井は、映画『生きててごめんなさい』や『極主夫道』(読売テレビ・日本テレビ系)、『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)、『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)といった作品に相次いで出演し、随所で存在感を発揮している。

 朝ドラ俳優としてもおなじみで、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年度後期)では梅丸楽劇団(UGD)の制作部長・辛島一平を好演。大物作曲家や演出家と歌手との間に常に板挟みになっているザ・中間管理職だが、強烈なキャラクターに囲まれても、誠実に向き合う安井の柔らかな佇まいはいい味を出していた。

 そんな安井が今期出演しているのは、『わたしの宝物』(フジテレビ系)、『オクトー~感情捜査官 心野朱梨~』season2(読売テレビ・日本テレビ系)、『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)の3作。『わたしの宝物』では、宏樹(田中圭)の上司でパワハラをした結果、左遷された真鍋を演じ、厭味ったらしいセリフをぶつけたかと思えば、『オクトー~感情捜査官 心野朱梨~』では、社会福祉や人材派遣事業を手がける実業家・山神淳としてシリアスな演技と向き合う。『あのクズを殴ってやりたいんだ』では、厳しくも愛のあるスポーツカメラマンの朝倉修太郎として、作品のキーパーソンを担っており、どこまで多彩な役ができるのかと感心するばかりだ。

 安井にはキャラクターにとらわれずに演じられる柔軟さがある。次はどんな表情を見せてくれるのか、ここまでワクワクする俳優は多くはない。

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