『嘘解きレトリック』観る者の心を射抜く鈴鹿央士の破壊力 鹿乃子を救った左右馬の言葉

『嘘解きレトリック』鈴鹿央士の破壊力

 先ほど手鏡を返した際、利市は「形見なんだ」とぽつりと呟いていた。しかしその瞬間、鹿乃子は彼の言葉に違和感を覚えていた。町で聞いた噂が重なり、鹿乃子は確信する。手鏡は盗まれたものに違いない、と。

 千代と共に再び利市を探す2人。しかし、真相は彼女たちの予想とは大きく異なっていた。利市は決してひったくり犯などではなく、母親に置き去りにされた少女・ヤイコ(永尾柚乃)の面倒を見る、善良な人物だったのだ。手鏡は拾ったものだったが、それを「母のもの」だと嘘をついていた。つまり、利市の嘘はヤイコを励ますための優しい嘘だった。

 真実を知った鹿乃子と千代は、利市に疑いをかけてしまったことを深く謝罪する。利市は穏やかな笑顔で2人の謝罪を受け入れてくれたものの、この出来事は鹿乃子の心に深い影を落とす。嘘を見抜く能力は、時として人を傷つける凶器になりかねない。過去の暗い記憶が蘇り、自分の能力に怖れを感じた鹿乃子は、重い足取りで左右馬の前から姿を消そうとするのだった。

 夜になり、川を眺める鹿乃子を見つけ出した左右馬。心配して千代の家に行って何があったかを聞いてきたと言い、突然叫び出した。

「僕はこんなまっずいつくも焼きを食べて待ってたのに、みつ豆って!!!」

 その大仰な絶叫の後、一転して優しい声色になった左右馬は、鹿乃子に優しい言葉をかける。嘘が聞こえる鹿乃子に見えないものがあるのなら、自分にはそれが見えるのだと。そして、柔らかな微笑みを浮かべながら告げた。

 「一緒にいればいいんだよ」

 今まで誰にも理解されなかった自分の特別な能力を、「一緒にいればいい」の一言で包み込んでくれるような人に出会えたこと。それは、鹿乃子にとってどれほど嬉しいことだっただろうか。仕草もビジュアルもかわいらしい左右馬の生み出す、ふとした瞬間の“キュン”は本作の醍醐味の一つ。鈴鹿央士演じる左右馬の破壊力たるや凄まじく、その愛らしさと優しさが絶妙なバランスで混ざり合い、観る者の心を確実に射抜いていく。

 「自分のことは信じられなくても、先生のことなら信じられる」

 この不思議な探偵事務所、そして左右馬の隣こそが、自分の居場所なのだと、鹿乃子は静かに悟ったに違いない。

■放送情報
『嘘解きレトリック』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:鈴鹿央士、松本穂香、味方良介、片山友希、大倉孝二、磯山さやか、今野浩喜、村川絵梨、櫻井淳子、杉本哲太、若村麻由美ほか
原作:都戸利津『嘘解きレトリック』(白泉社・花とゆめコミックス)
脚本:武石栞、村田こけし、大口幸子
演出:西谷弘、永山耕三、鈴木雅之
プロデュース:鈴木吉弘、狩野雄太
制作協力:AOI Pro.
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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