北米以外でやたら強い『ヴェノム:ザ・ラストダンス』 日本でも好調なスタート

『ヴェノム』最新作、日本でも好調なスタート

 11月第1週の動員ランキングは、前週1位だった『八犬伝』を除く上位4作品のうち3作品が初登場。初登場1位となったのはソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの人気シリーズ『ヴェノム』の第3弾にして最終章とされている『ヴェノム:ザ・ラストダンス』。オープニング3日間の動員は29万8000人、興収は4億4400万円。2021年12月公開の前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の初動成績の97%、2018年10月公開の前々作『ヴェノム』の初動成績の101%と、シリーズとして極めて安定した結果を出し続けている。先行上映と祝日の11月4日を含むトータル7日間では動員44万人、興収6億8700万円。作品によってかなり興収にバラツキのあるソニーズ・スパイダーマン・ユニバースにあって、日本における『ヴェノム』シリーズ人気は健在だ。

 ディズニーが展開しているマーベル・シネマティック・ユニバースの新作長編映画が『デッドプール&ウルヴァリン』1本だけとなった2024年、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースは『マダム・ウェブ』、本作『ヴェノム:ザ・ラストダンス』、そして12月13日に米日同時公開される『クレイヴン・ザ・ハンター』と、精力的に新作が公開されることとなった。世界興収13億3780万ドルの『デッドプール&ウルヴァリン』に対して、『マダム・ウェブ』の世界興収は1億50万ドルと、劇場公開を終えた作品で比較するともはや同じジャンルの映画とは思えないほどの差がついてしまったが、それでも1つの作品が失敗する度に大騒ぎになり、ユニバースの整合性にも観客の厳しい視線が向けられているマーベル・シネマティック・ユニバース作品と比べると、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース作品は製作規模においても観客からの期待においても気軽さがある。

 実際、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』も北米での興収は伸び悩んでいるものの、中国では今年のハリウッド映画では最高の初動成績を叩き出していて、既に世界興収は3億ドルを超えている。肝心のスパイダーマンとの合流は、2026年7月公開と発表されているトム・ホランド主演によるマーベル・シネマティック・ユニバース版の『スパイダーマン』4作目が本格始動したことでさらに先送りとなったままだが、ソニー・ピクチャーズにとってはアニメーションの『スパイダーバース』シリーズと並んで、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース作品が引き続きドル箱となっていくことは当面変わりはないだろう。

 このように、比較的ローリスク、ハイリターンなソニーズ・スパイダーマン・ユニバース作品だが、一つ苦言を呈したいのは、一部で話題になっているエンドロールの異常な長さだ。2時間半以上の上映時間が当たり前になりつつあるマーベル・シネマティク・ユニバース作品に比べて、これまですべて2時間以内の上映時間に収まっているソニーズ・スパイダーマン・ユニバース作品(『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は1時間50分)。しかし、このところエンドロールがどんどん長くなっていて、『ヴェノム:ザ・ラストダンス』ではなんと15分近くあった。これは、実に本編の約6分の1の長さ。

 スーパーヒーロー映画ファンなら、ミッドクレジットやエンドロール後にオマケ映像があることを誰もが知っているわけで、エンドロールが始まった途端に映画館で席を立つわけにもいかない(ちなみに普通の作品ならば、自分は「エンドロールで席を立ってもいい派」だ)。膨大なスタッフが参加している以上、ある程度仕方がないのかもしれないが、一番不可解なのはエンドロールの流れる速度がやたら遅いこと。「映画を早送りで観る人たち」に眉をひそめる自分のような人間にとっても、ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースのエンドロールだけは倍速視聴できないものかと毎回思う。

■公開情報
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』
全国公開中
Filmed for IMAX®/Dolby Cinema®/Dolby Atmos®/ScreenX with Dolby Atmos® (全て字幕版のみ)
2D/MX4D®/4DX/ULTRA 4DX/ScreenX (字幕版/日本語吹替版)
出演:トム・ハーディ、キウェテル・イジョフォー、ジュノー・テンプル、リス・エヴァンス、ペギー・ルー、アラナ・ユーバック、スティーヴン・グレアム
監督・脚本:ケリー・マーセル
原案:トム・ハーディ、ケリー・マーセル
プロデューサー:アヴィ・アラド、マット・トルマック、エイミー・パスカル、ケリー・マーセル、トム・ハーディ、ハッチ・パーカー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://www.venom-movie.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/VenomMovieJP

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画興行分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる