『トップガン』が巨大なポップカルチャーになり得た理由 製作の紆余曲折とともに振り返る

『トップガン』はあらゆる意味で“80年代的”

 11月8日の日本テレビ系『金曜ロードショー』で、みんな大好き『トップガン』が放送される。

 オレンジ色に染まった朝焼けのなか、ハンドサインを送るデッキクルー。ギラギラ照りつける太陽の下で、ビーチバレーに興じるマッチョガイたち。カワサキのバイクでF14トムキャットと並走する、トム・クルーズの勇姿。この映画はすべてのシーンがキメキメで、とにかくカッコいいショットのオンパレードだ。

 『トップガン』が世紀の傑作かと言われたら、正直言って言葉に窮してしまう。だが、大きな社会現象を巻き起こした作品であることは間違いない。全世界の興行収入は、3億5000万ドル以上。トム・クルーズが着ていたフライト・ジャケットMA-1はバカ売れし、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」やベルリンの「愛は吐息のように」を収録したサントラは、全米だけでも700万枚を越えるベストセラー。映画の大ヒットで、海軍への志望者が急増したとも言われている。

 そして何よりも、当時24歳だったトム・クルーズの溌剌とした魅力! オファーを受け取ったのは、リドリー・スコット監督によるファンタジー映画『レジェンド/光と闇の伝説』の撮影中。その時点ではあまり前向きではなかったが、リドリー・スコットのとりなしもあって出演を決意する。『トップガン』の監督を務めたトニー・スコットはリドリーの実の弟であり、1980年に設立された製作会社スコット・フリー・プロダクションズ(当時の名称はパーシー・メイン・プロダクションズ)の共同創始者。弟の出世作を、兄がアシストしたのだ。

 トム・クルーズにとっても、本作はスターダムへとステップアップする重要な作品となった。向こうみずで自信満々なパイロット“マーヴェリック”は、まさにハマり役。ケリー・マクギリス演じる女性教官シャーロットとの情熱的な恋、アンソニー・エドワーズ演じる親友グースとのアツい友情、ヴァル・キルマー演じるライバルのアイスマンとの切磋琢磨。眩しいくらいに瑞々しい感性で、トム・クルーズはこの役を演じきる。

 1986年の公開当時、みんな『トップガン』に夢中だった。さまざまなポップカルチャーを生み出したというよりも、この映画そのものが巨大なポップカルチャーだったのだ。イケイケでノリノリだったあの時代のアメリカが、このフィルムにはしっかりと焼きついている。

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