『光る君へ』柄本佑の演技の凄さが詰まった道長の涙 まひろの前でだけは“三郎”に

『光る君へ』柄本佑の演技の凄さが詰まった涙

 その後、道長は病に倒れる。道長の病はなかなか回復せず、宇治にある別邸で川の流れを眺めるやつれた道長の姿は見ていて心憂うものがあった。そんな道長の身を案じた百舌彦の導きにより、まひろと道長は顔を合わせる。道長を演じる柄本の演技、宇治の別邸に現れたまひろの姿に驚き大きく息を呑む様、その後、ばつの悪そうな顔をしながらも安堵したように口元が微笑む様には、道長にとってまひろの存在がどれほど大きなものかがひしひしと伝わってきた。

 川辺を歩きながら語り合う場面で、道長は心の内を明かした。

「誰のことも信じられぬ。己のことも」

 まひろはそんな道長に寄り添う。2人のやりとりは、お互いを深く深く思い合う気持ちに満ちていた。道長が「お前との約束を忘れれば、俺の命は終わる」と口にすると、まひろは「この世に私の役目はもうありませぬ」と返し、ともに命を終えてもいいと示唆する。まひろを思うからこそ、まひろの言葉を受け入れられない道長が「お前は……俺より先に死んではならぬ」「死ぬな」と言った時、まひろはこう返した。

「ならば……道長様も生きてくださいませ」
「道長様が生きておられれば、私も生きられます」

 まひろから顔をそむけた後、感情があふれだすのを堪え切れずに涙を流す柄本の演技が心を打った。道長は民のための政を目指し、誰にも本音を明かすことなく務めてきた。そんな道長がこれまで秘めてきた本心、たとえ押し殺したつもりはなくともあらわにできなかった苦しみを、まひろのまっすぐな言葉が解放したのだ。道長は昔も今もまひろの前でだけは少年期の“三郎”でいられる。本来の道長らしい素直な感情があふれだした時、彼が抱えてきた苦しみがようやくはっきりと感じられた。

 道長とまひろは新たな約束を交わし、まひろは再び筆を取る。まひろが紡ぐ新たな物語は、まひろと道長、そして朝廷や後宮の人々の今後の生き様にどのような影響を与えるのだろうか。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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