大根仁、Netflixと5年契約を結んだ背景と今後の展望 「複数の監督で作るやり方も探りたい」

大根仁に聞く、Netflixと5年契約を結んだ背景

「ショーランナー的な部分も担っていきたい」

――いずれにせよ、変に海外を意識すると、あまりうまくいかないというのは、音楽の世界を見ても思うことであって……ただ、ドメスティックとはいえ、グローバルでヒットする作品は、どれも基本的なドラマツルギーの部分は、結構普遍的なところを突いているのかなって思ったりもしますけど。

大根:そうですね。例えば『クイーンズ・ギャンビット』にしても、みんながみんなチェスのルールを知っているわけではないだろうけど、やっぱり物語とキャラクターのベーシック設定が、非常に普遍的ですよね。あとはやっぱり、映像のルックと音楽を質の高いものにするということ、それはものすごく重要だと思います。。

――そういう意味では『地面師たち』も、土地取引の詳細はわからなくても、基本的なプロットの部分はかなり普遍的なものであって、なおかつ映像のルックや音楽の部分もすごくこだわっていて……。

大根:そうですね。ありがとうございます……としか言いようがないですけど(笑)。そこは、あまり調子に乗らないようにというか、『地面師たち』というのは、ある種の成功体験なんでしょうけど、じゃあ次もまたこれをトレースするようなものを作りたいかっていうと、そんなこともなく。また新たな面白い作品を作っていくというか、何よりもまず自分が、作り手というよりも、Netflixユーザーとして観たいと思うような作品を作っていくってことですかね。

――Netflixの予算規模ならば実現できるかもしれない、とっておきの企画があったりはしないんですか?

大根:うーん、どうでしょう(笑)。や、ホント現時点でお話しできることがないんですよ。もちろん、何もしてないわけではなく、いろいろと打ち合わせは進めているのですが、今ここでお話できるものは何もないっていう。ただ、ひとつだけ、現時点で思っていることをちょっとだけお話しすると、今までは自分で企画を立てて、自分で脚本を書いて、『地面師たち』だったら全話自分が監督してみたいなことをやっていたんですけど、そういったやり方よりも、ちょっと先に進みたいなっていうのは思っていて。海外のレベルの高いドラマとかを観ていると、同じシーズンの中で監督が変わっても、まったく品質が落ちないとか、そのへんのクリエイティブのコントロールが、すごくできているじゃないですか。それは誰が優秀なのか。プロデューサーが優秀なのか、そもそも監督の水準が高いのか……。

――あるいは「ショーランナー」と呼ばれる人たちが優秀なのか……。

大根:そうそう。そういうショーランナー的な存在になりたいとまでは思ってないですけど、ある種そういった部分も担っていきたいなあとは思っていて。たとえば、『エルピス』のときは、僕がチーフ演出で、『地面師たち』にも入ってもらった北野隆という助監督と、二宮孝平という監督捕が、それぞれ1話ずつ演出したんですけど、彼らの回もすごく良かったんですよね。だからこれからは、『地面師たち』のように全話を自分が監督してっていうことではない、複数の監督で作るやり方も探りたい。それも従来のテレビドラマのような分業制という形ではなく、クオリティを追求するための……そう、ドラマ版の『FARGO/ファーゴ』を撮っているチームがいるじゃないですか?

――ノア・ホーリーのチームですか?

大根:そうそう。ノア・ホーリーって、ショーランナーであり脚本家であり監督でもあり、さらには音楽も作れるとんでもない人なんですけど、作品自体には彼自身の「作家性」みたいなところはあまり感じないんですよね。というか、ここ数年のあいだに観た配信作品の中で、個人的にいちばんすごいと思ったのが『FARGO/ファーゴ』シリーズで、特にシーズン2と4が、本当に素晴らしかったんですけど。

――ドラマ版の『FARGO/ファーゴ』は、シーズンごとにキャストも内容も、さらには作品のトーンやテイストまで変わって、しかもその全部が面白いという恐るべきドラマでした。

大根:そうそう。ああいうふうに、自分が中心となってというよりは、何かチームみたいなものを作って、いろんなことをやっていきたいなっていう感じは、ちょっとあるんですよね。その環境は、多分Netflixには整っていると思うので。

――確かに。

大根:ちなみに、ノア・ホーリーは、『FARGO/ファーゴ』シリーズを5シーズンで閉じて、今は『エイリアン』のドラマシリーズを作っているみたいなんですけど、全然ジャンルが違うじゃないですか。だけど、ノア・ホーリーのチームがやるなら、絶対面白いだろうなっていうのがあって。そういうふうにチームを作って、いろんなジャンルのものをやっていきたいなっていうのは、今ちょっと思っています。今回、数多受けた『地面師たち』関連の取材で、リアルサウンドさんにしか話してないことで言えば、そういうことですかね(笑)。まあ、自分でも正直、次に何が出てくるのかは、まだちょっとわからないところがあるので、あまり気負わずやっていきたいなって思っています。

参照
※ https://www.netflix.com/tudum/top10/tv-non-english?week=2024-08-04

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