大橋明代監督が語る『まほあく』制作秘話 “ずっと続いていく物語”に込めたこだわり

大橋明代監督が語る『まほあく』制作秘話

火花役・伊瀬茉莉也の吹き替えは「本当に素晴らしかった」


――火花も個性が強く実に面白いキャラクターでした。

大橋:私も大好きです。彼女は暴力行為をするだけのやかましい子に見えるけど、ただ恥ずかしがり屋なだけで、実はかわいいものや白夜ちゃんのことが大好きないい子、というのをきちんと描きたくて。だから白夜ちゃんから嬉しいことを言ってもらえたら、火花ちゃんもすごく嬉しそうに「フ★ック」と返すといったところを丁寧に描きました。

――火花役の伊瀬茉莉也さんも大変だったでしょうね。さまざまな感情を「フ★ック」と「キルユー!」だけで表現するという(笑)。

大橋:本当に素晴らしかったです!  アフレコでも叫んでいただくことがあって、声が裏返ることもありましたが、それもすごく愛らしくてそのままいかせてもらったこともありました。

――火花をはじめサブキャラクターも魅力的ですが、最終回を白夜とミラの日常的なやり取りをふたりの視点から描く「SideB/SideM」というエピソードで締めくくった理由を教えてください。

大橋:結局は白夜ちゃんとミラ君というふたりの話なので、それにふさわしいエピソードで終わろうというのは、最初から決めていました。ミラ君が白夜ちゃんをくすぐったり、ほっぺたをつねったりがずっと続くだけ、しかもそれを各自の視点があるので都合2回繰り返す……そんな最終回で本当にいいのだろうかと思いながら打ち合わせしていましたが(笑)。ただこれもふたりらしいかなと。

――制作会社がラブコメのイメージがあまりないボンズでした。

大橋:制作さんから話を聞く限りでは、「女の子を描きたかったんです」「いつも戦っている作品ばかりなので楽しい」とおっしゃってくれる方もいたそうです。白夜ちゃんの脇腹をくすぐるカットも、いつもはものすごくかっこいいものを描かれる原画さんが担当してくださって、「ここの指の動き、どうしましょうか?」みたいなやり取りもあったりと、贅沢なこともできました。

最終話のラストに込めた“原作ファンへの思い”

――最終回では大橋監督ご自身が絵コンテと演出を担当されていました。こだわりのポイントをお聞かせください。

大橋:演出までやれたのはこの話だけだったのでとても楽しくやれました。最終回なのでオープニングやエンディングが流れる場所をいつもと変えたんです。特にオープニング曲の「未完成ランデヴー」は「エンドロールはいらないから」というキラーワードがあるので、最後に持ってきたいという思いはずっとありました。このふたりの関係はここで終わらず、これからも続いていくんだと感じてほしくて。

――第1回の冒頭が観覧車で始まり、最終回のラストが観覧車で終わるのも同じ意図からの演出でしょうか?

大橋:『まほあく』を「ずっと続いていく物語」にするための象徴になるようなものを考えたところ、観覧車を思い付いて。ふたりが出会ったタイミングで動き出すことで恋が始まったサインにもなるし、最終回でもずっと周り続けることで彼らの話が続くというサインにもなるので。

――やはりそうでしたか。第1回冒頭は、観覧車の円が月に重なるのも印象的でした。

大橋:そのお月様も第1回は大きく欠けていますが、話が進むごとにどんどん満ちていって最終的にはフルムーンになるんです。

――すごいですね。監督にとって特にお気に入りの描写やシーンは?

大橋:ずっと地続きの話だと感じてほしくて、小物で演出しています。白夜ちゃんがクリスマス当日にミラ君からガーベラをもらっていたので、長持ちするよう切り戻しして部屋に飾っているのをその後の話でも描写したり。ほかにも、部屋にクリスマスのティッシュを飾ってたり人参もリボベジしてたり……白夜のマグカップも小さい時に保育園か何かで作ったやつをずっと使っているんです。そんなふうに小物で生活が続いているのを匂わせています。

――細かなところまで観直すのが面白そうですね。

大橋:最終回まで見終わった後、第1回から観直していただくと、白夜の感情が豊かになっていることに気付くはずです。というのも、私が音響監督と久々に第1回の音声を聴くタイミングがあったのですが「最初はこんなに感情なかったの!?」と驚いたんですよ。アフレコでは自分達でディレクションしたのに(笑)。もう、「白夜ちゃん成長したね~」という感じになりました。

――監督の白夜への愛が伝わります。

大橋:とにかく「白夜ちゃんがかわいければそれでいい」くらいの感じで、彼女を娘みたいに思いながら作っていました。最終回まで見てくださったみなさんには感謝するばかりですが、みなさんも折に触れて観返して、白夜ちゃんの成長を感じていただけると嬉しいです。

『まほあく』を彩った綾奈ゆにこの脚本術 4コマ漫画からアニメ版へ引き継がれた“美しさ”

何年経っても色褪せない物語がある。長年温められてきた企画がついにアニメ化を迎えた『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』(以下、『…

■配信情報
TVアニメ『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』
Lemino・アニメタイムズほか各動画配信サービスにて配信中
キャスト:小野友樹(ミラ)、中原麻衣(深森白夜)、三木眞一郎(御使い(猫))、伊瀬茉莉也(篝火花)、緑川光(御使い(鳥))、鈴村健一(フォーマルハウト)、川澄綾子(ベラトリックス)、下野紘(アルキオネ)、東山奈央(スピカ)、山崎たくみ(サダルスウド)、土師孝也(ベテルギウス)ほか
原作:藤原ここあ(『ガンガンコミックス JOKER』スクウェア・エニックス刊)
監督:大橋明代
シリーズ構成・脚本:綾奈ゆにこ
キャラクターデザイン:飯塚晴子
サブキャラクターデザイン・総作画監督:新井伸浩
プロップデザイン:荒木弥緒
美術監督:空閑由美子、鬼谷拓実
色彩設計:後藤ゆかり
撮影監督:神林剛
編集:坂本久美子
音響監督:木村絵理子
音響効果:八十正太
音楽:MAYUKO
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
アニメーション制作:ボンズ
製作:まほあく製作委員会
音楽:MAYUKO
アニメーション制作:ボンズ
オープニングテーマ:Lezel「未完成ランデヴー」
エンディングテーマ:ミラ&深森白夜(CV:小野友樹&中原麻衣)「いつも二人がいいね」
©藤原ここあ/SQUARE ENIX・まほあく製作委員会
公式サイト: mahoaku-anime.com
公式X(旧Twitter):@mahoaku_anime
公式Tiktok:@mahoaku_anime

■リリース情報
TVアニメ『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』Music Collection
発売中
品番:EYCA-14406~7
価格:3,500円(税別)
●アニメ描き下ろしジャケット
●マルチケース2枚組 ※CD2枚組 
詳細:https://mahoaku-anime.com/bdcd/detail/?id=1020425

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