鈴木崚汰×逢坂良太×谷江玲音が明かす、声優を志した背景 “10年前の自分”を語り合う
日常のちょっとした瞬間に笑いを見出せると、毎日がより楽しくなる。10月から始まる新作アニメ『妖怪学校の先生はじめました!』は、まさに日常をパッと明るくするような笑いを私たちの生活に届けてくれる作品だ。
主人公の安倍晴明は、ビビりで泣き虫な新米教師。憧れの職に就いた喜びもつかの間、赴任先は妖怪たちの学校だった……。教壇についた晴明が体験するのは、人間社会とは異なる価値観を持つ妖怪生徒たちと、ヘタレな人間教師である晴明との奇妙でにぎやかな学園ライフだ。
公式サイトで「愉快☆痛快☆妖怪☆学園コメディ!」と謳われる本作の魅力に迫るべく、安倍晴明役の逢坂良太、佐野命役の鈴木崚汰、狸塚豆吉役の谷江玲音にインタビュー。また、2014年から10年に渡り連載されている原作にちなみ、自身の“10年前”を振り返ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
大事なのは“みんなで積み上げた笑いの空気”
ーー『妖怪学校の先生はじめました!』はハチャメチャで楽しいキャラの掛け合いが魅力です。今回のようなギャグ要素全開のコメディ作品でキャラクターを演じることについて、普段から感じていることはありますか?
逢坂良太(以下、逢坂):深く掘り下げるとめちゃくちゃ難しいです。「笑わせなきゃ」とか「これどうやったら面白くなるんだろう」とか、変な雑念が入ってきてしまうので。そういう雑念を払うためにも、コメディの演技は1人で考えるとダメだと思うんです。「自分はこれが絶対面白い!」と思って持っていっちゃうと、意外と現場の空気に全然馴染まないんです。
ーーアフレコ現場のみんなで積み上げた“笑いの空気”が重要ということでしょうか?
逢坂:そうですね。家で作ってきたものと、実際マイクの前に立ってみんなと一緒にやった時とで、ノリが全然違ったり。シーンの流れとかそれまでの積み重ねがあって、その流れを受けた上でのちゃんとしたボケがハマればいいんですけど。それをそのまま出してしまうと、浮いてしまうし寒くなってしまうんです。
鈴木崚汰(以下、鈴木):わかります。特にこの作品は、全体的にノリの軽い笑いが多いじゃないですか。緻密に作り込んだお笑いにしようと思うと、ちょっと雰囲気が違うんですよね。喋ってるノリとか、軽いノリから生まれてくるギャグを大事にしたいと思いながらやってました。
ーー佐野くんは一見クールな感じもありますよね。
鈴木:それこそ佐野くんって、どちらかというと引きながらツッコんだりする部分が多いので。うまくバランスを取るのが難しかったです。あんまり強くいくと佐野くんのツッコミじゃなくなってしまう。「佐野命」として笑いを成立させるという意味で、結構大変でした。
谷江玲音(以下、谷江):それぞれが全力だからこそ起きる笑いがあると思うんです。例えば……モテたいとか(笑)。そこにこちらの邪念が入っていたらおかしなことになってしまうし、全力さが欠けてしまうと笑いにも繋がらなくなってしまうことを、現場で感じました。笑いよりも先に、いかに本気で全力で生徒であるか、その場にキャラクターとしていられるか。そういうことが、ギャグ全開のコメディの難しさかもしれないです。
ーー今回3人で共演してみて、お互いの印象はいかがですか?
鈴木:逢坂さんとは何度か現場で共演していましたが、アフレコ現場でがっつりというのは初めてで。
逢坂:意外とそうだよね!
鈴木:長いこと一緒にやってきましたが、お茶目な人ですね(笑)。休み時間、声真似しかしていないんですよ。勝手に披露してくれるんです。
ーーちなみに、誰の声真似ですか?
逢坂:(小声で)それは、ここでは言えないですね。
鈴木・谷江:あははっ。
鈴木:逢坂さんは、お芝居の面でバランスを見て、自分の中で足し算引き算をして、僕たちが乗りやすいフックを作ってくれるんです。谷江さんは緊張していた印象が強いけど、マイクの前に立つと爆発力ももちろんあるし、声が本当に魅力的でした。マスコットとしての声が出せる役者ってそんなにいないと思うので、そういう意味でも魅力たっぷりの役者さんだなと。
逢坂:鈴木くんは本当に年齢が若いのに、落ち着いた芝居を堂々とやれる子なんです。だから、同年代……いや、むしろちょっと上の人みたいな感覚で接しています。自分がこうだって思ったものに対して、「こう返してくれたら嬉しいな」と思うものに、きれいにプラスアルファをつけてくれる。そういうところがやりやすかったですね。「もっとこう来てほしいのにな」と思うこともあったりするんですが、鈴木くんに対してはそれを全く感じたことがなくて。
鈴木:ありがとうございます!
逢坂:自分としても、素直に流れのまま演じられるというのは助かりました。
鈴木:大変なんですよ〜。逢坂さんがいっぱいかましてくれるから(笑)。
逢坂:ははっ。音響監督の藤本(たかひろ)さんは、もともと声優をやっていらっしゃる方なので、頭の中に「こう来てほしいな」という理想があると思っていて。だから、「もうちょっと(コメディ感を)出してほしい」みたいなディレクションをいただいたりもしました。
ーー谷江さんについてはいかがですか?
逢坂:谷江くんは今回の現場ではじめましてで。最初の方は、さっき鈴木くんも言ってたけど、緊張してた……よね?
谷江:はい(笑)。
逢坂:でも、その新人らしい感じが逆に味になってて。僕も通ってきた道ですが、自分の気持ちをそのまま出すという部分は引き立つので。新人さんの中には、それができない子もいるんですよね。緊張しちゃって、自分の思う通りに全然何もできないみたいな。でも谷江くんは、話数が重なるにつれてどんどんうまくなっていくというか。むしろこれ、谷江くんの成長物語なのでは? みたいな(笑)。
谷江:そう言っていただけるとありがたいです。
逢坂:この成長物語を見られるのが、なかなか楽しいというか。
谷江:初めてのテレビシリーズだし、豆吉がたくさん喋ってくれる子だったから、セリフ量も多かったんです。台本をいただいた時は「嬉しさとプレッシャーのバランスが両方マックス!」みたいな気持ちでした。最初の頃は全セリフリテイクしていたような勢いだったので、緊張してしまって……。今回は2クール、本当に温かい現場でやらせていただいたので、「皆さんに成長させていただいた」と強く感じてます。
ーー谷江さんから見たお二人についても聞かせてください。
谷江:逢坂さんは、元々僕が観ていたアニメにもよく出演されている先輩なので、本当に勉強になることばかりでした。収録の様子を見ていても、「こういうやり方をするんだ」とひとつひとつ目から鱗と言いますか。豆吉は高い声のキャラクターなので、朝の収録で声が出にくい時があって。(逢坂演じる)晴明も高い声のキャラクターなので、逢坂さんが「朝はきついよね」と声をかけてくださったこともありました。座長として全体のバランスを見ながら、新人の僕にも気を配ってくださって、とても温かい方です。
ーーそんな逢坂さんをはじめとする皆さんと共演して、今回の現場で特に学びになったことはありましたか?
谷江:まず前提として、現場全体の皆さんのエネルギーに圧倒されました。自分が想定していた何十倍もの力を出して、やっとアニメになるんだと驚きましたね。皆さんのツッコミの声が大きくて、「マイクが壊れないかな?」と思ったくらいです。中でも逢坂さんは、「俺はこれだと思います」という、自信を持って演技に臨む姿勢が一番勉強になりました。鈴木さんについては……貫禄を感じました(笑)。
鈴木:図々しくてすみません!
谷江:いやいや! そんなことないです(笑)。キャリアの中で積んできたいろいろな経験があるからこそだと思うんですけど、鈴木さんの佐野くんは本当に魅力的で。自分は、頭の中の豆吉のイメージと実際の演技にギャップを感じて悩むこともあったんですけど、鈴木さんが佐野くんを演じる瞬間、「この佐野くんと会話できる豆吉でなければ!」と、とても意味で刺激を受けました。