『虎に翼』“出る杭”だった寅子が理想の上司に よねにしか言えない辛辣で優しい言葉

『虎に翼』“出る杭”だった寅子が良き上司に

 よねの言葉は本作の核心をついていた。『虎に翼』は徹底して当事者意識に貫かれており、その根底に憲法が掲げる個人の尊厳があることは明らかだ。尊厳は個々の選択として発現する。司法試験に合格した涼子(桜井ユキ)は修習へ行かないと告げる。それは「世の中への私なりの股間の蹴り上げ方」である。涼子が言う「心の中にいるよね」は、よねを含む女子部の絆を指している。涼子の「お気立てに難がある」をよねが覚えていたことも味わい深かった。

 家裁に異動した朋一(井上祐貴)は、航一(岡田将生)と寅子に裁判官を辞めたいと打ち明けた。朋一が抱く理想は挫折し、真紀(藤丸千)からも離婚を告げられた。悩める息子を「何も間違っていない。謝ることなど何一つない」と全肯定した航一は、桂場(松山ケンイチ)のもとへ向かう。

 本作は主人公たちが悩む姿を描いてきた。私見だが、法律家は悩む仕事ではないだろうか? 依頼人のため、事件解決のため悩み、「はて?」と疑問を抱いては答えを出そうともがく。答えが正解かどうかも重要だが、悩んだ過程そのものが結果的に多くの人の道しるべになる。そのようにして物語を前へ運んできた『虎に翼』が、最後に何を伝えるか刮目して見守りたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、石田ゆり子、森田望智、土居志央梨、ハ・ヨンス、戸塚純貴、高橋努、平埜生成、塚地武雅、趙珉和、三山凌輝、川床明日香、円井わん、青山凌大、今井悠貴、菊池和澄、井上祐貴、尾碕真花、池田朱那、平田満、余貴美子、沢村一樹、滝藤賢一、松山ケンイチ
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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