『笑うマトリョーシカ』清家の“意図”を徹底考察 「ハヌッセンは存在しない」という仮説
最終話を目前に控え、未来の総理候補と噂される若き人気政治家・清家一郎(櫻井翔)を裏で操る“黒幕”の正体についての考察に熱が帯びている『笑うマトリョーシカ』(TBS系)。
高校時代からずっと清家を政治家にすべくブレーンとして暗躍してきたかに見えた政務秘書官・鈴木俊哉(玉山鉄二)は、呆気なく彼に切られた。しかも2人の夢だった官房長官就任後すぐに。
裏で糸を引いていた真中亜里沙(田辺桃子)
鈴木を欺き、実は母親・浩子(高岡早紀)の影響下にあったかに思えた清家だったが、なんと彼ら母子関係も清家が代議士になってすぐ疎遠になっていた。そんな2人を嘲笑うかのように裏で糸を引いていたのは、浩子の現夫・小松(堀内正美)のヘルパー・田所(和田光沙)改め真中亜里沙(田辺桃子)だった。大学時代の清家の恋人・亜里沙は2人の関係を邪魔しようとする浩子と鈴木の干渉から逃れるために自作自演の失踪を決行。そして清家を代議士にするために武智和宏(小木茂光)の愛人になって取り入り、交通事故に見せかけて処分した。
しかし、清家にとっての「ハヌッセン」は亜里沙でもなかった。彼女のことも清家は3年前に捨てていたのだ。自分ではない誰が清家を操っているのか探るためにわざわざ顔も身元も偽り、浩子に近づいたという亜里沙の執着も狂気じみている。そして鈴木の交通事故には彼女は一切関与していないという。
徐々に“自我”が芽生え始めていった清家(櫻井翔)
では、3年前に亜里沙と決別してからの清家のブレーンは一体誰だったのか。ここまで、清家を巡って周囲の人はあの手この手で自分の希望と夢を彼に託して詰め込んで、自分の都合の良いように彼を利用してきた。清家には人の支配欲と独占欲をここまで刺激する才能があり、周囲の人は気づかぬうちに清家に取り込まれているとも言える。人生を捧げ、顔も身元も捨て去って変えて、犯罪に手を染めさせる、そこまでして彼の操縦権を握りたいと周囲を欲望させる清家に、ある意味感心してしまう。
きっと清家自身もその自分の才能にどこかで気づいていただろう。周囲の人間が自身では成し遂げられなかったことを都合よくこちらに託し夢見る姿に、どこかで疑問を持ち始めたのではないだろうか。
最初は浩子や鈴木にプロデュースされながら、彼らが敷いてくれたレールに疑問を持たず歩みを進めていただろう清家。そんな彼に自我が芽生え始めたのは、やはり亜里沙と交際してからだろう。彼女との交際に異様に反対する浩子と鈴木に苛立ち、さらにその2人が実は隠れて男女の関係になっていたという矛盾に、自分は侮られていると気づいてしまったのではないだろうか。
だからこそ、清家は彼らに最もダメージを与えられるタイミングで、つまり彼らが自分に託した夢を叶えた直後にそれぞれを切っている。