2024.09.04 07:00

戸塚純貴のムードメーカーとしての存在感　『虎に翼』の名演から『新宿野戦病院』で迷演へ

文＝折田侑駿、写真＝『新宿野戦病院』©︎フジテレビ

　波乱の展開が続き、何が飛び出してくるか分からないドラマ『新宿野戦病院』（フジテレビ系）。そんな本作に、あの戸塚純貴が登場するのだという。彼が演じるのは、歌舞伎町の人気ホスト・板垣凌介だ。

　本作は、“クドカン”こと宮藤官九郎が脚本を手がける“医療エンターテインメント”。物語の主な舞台は歌舞伎町に佇む「聖まごころ病院」で、チャラい美容皮膚科医の高峰享（仲野太賀）と元アメリカ軍医のヨウコ・ニシ・フリーマン（小池栄子）を中心に、個性豊かな面々が鮮やかな人間模様を紡ぎ出している。

　そんな「聖まごころ病院」は土地柄、さまざまな事情を抱えた患者たちがやってくる。この新たな患者のひとりが戸塚が演じる板垣凌介らしい。

　本作への戸塚の出演の報を知り、胸が躍ったのは私だけではないだろう。その理由はもちろんそう、戸塚が出演中の朝ドラ『虎に翼』（NHK総合）に“名演”を刻んだ演技者たちが、こちらでは素晴らしき“迷演”を披露しているからである。

　『虎に翼』のヒロイン・寅子（伊藤沙莉）の戦死した夫を演じていたのは仲野で、寅子の父を演じていたのは岡部たかしだった。さらに、平岩紙、塚地武雅、余貴美子といった者たちが集結。『虎に翼』と『新宿野戦病院』という完全に毛色の異なる2作で、これまた完全に趣を異にした演技合戦を繰り広げているのだ。そして満を持して（？）、ここに戸塚が並ぶわけである。

　多くのファンを獲得してきた『虎に翼』だが、戸塚といえばその中でもとくに株を上げた俳優のひとりだろう。本作は時代が変わっても絶えず横たわっている社会のさまざまな問題を取り上げ、それらに登場人物たちが立ち向かう姿をとおして、私たち視聴者に問題提起をしてきた。おそらくそのすべては、いまの社会に対する脚本家・吉田恵里香の視座から生まれたシナリオに記してあるはずだが、やはり優れた演技者たちがいてこそ、その“声”は画面越しの私たちの元まで届いてくるのだ。

　戸塚が演じる轟太一は曲がったことが大嫌いな性格の持ち主。これは言い換えれば「ピュア」だともいえる。だから誰もが古い価値観のまま生きていた時代ではそれを是としていたフシがあったが、時代や社会が変われば自ずと彼も変化してきた。そのさまを、戸塚は長い時間をかけて表現し続けてきたのだ。